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山口県知事、上関原発の建設を止める方向か
2011年6月3日10:16PM
「山口県、上関原発埋め立て延長認めぬ方向に」(『毎日新聞』)五月一九日朝のこの報道を端緒に、二井関成知事が予定地の海面埋め立て免許の延長を認めない方向で検討に入ったと、山口県の動向が全国の注目を集めた。
そのころ、同原発予定地対岸の祝島に住む清水敏保さんと山根善夫さんは福島県にいた。上関町の町会議員もつとめる二人は、市内の一部が福島第一原発三〇キロ圏内に当たるいわき市内の港を訪ね、漁師らの声を聞いて歩いた。
「集落の眼の前四キロのところに原発が建とうとしてて、約三〇年反対しとるんで、原発事故は他人事じゃないんです。話きかせてもらえませんか」
清水さんがそう尋ねると、呻くような第一声のあと「できてないんならできん方がいいんだべ。つくらしてはいかん」。瓦礫処理など作業の手を休め、そう応じてくれたという。
中国電力(中電)が計画する同原発は、約一四ヘクタールの海域を埋めたて、陸域ふくめ全三三ヘクタールを造成して建てる。二〇〇八年一〇月、県は海の埋め立て免許を交付。一年以内が着工期限とされたため、島民の約九割が原発を拒む祝島を中心に抗議が続くなか、中電は〇九年一〇月、埋め立て海域をしめす灯浮標を設置し「着工」。その後も祝島を中心とする地域住民らの強い抗議で工事は進んでいない。
だが免許の期限は「着工から三年」。一二年一〇月までに完成しないと失効となる。三月一一日の福島第一原発事故のあと中電は県の要請をうけ工事を「一時中断」しており、免許延長なしには原発を建設できない状況だ。
上関原発問題は加速度的に広域化している。予定地から三〇キロ圏内で、光市に住む新人が「原発のない未来」を訴え県議選光市区(定数二)に立候補し現職候補に肉薄。三〇キロ圏内の周防大島でも、これまで一人で上関原発問題にかかわってきた浜本康裕さんが島内に仲間を得て、小出裕章氏の講演会を五月二八日に開いた。
山口県港湾課によれば、知事の裁量でどこまで判断できるかを国交省河川局に照会中。ただし県の最終結論に至らないので照会状況は「回答できない」。知事は六月議会で方向性を示すという。
(山秋真・ライター、5月27日号)