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圧力上昇時に放射性物質を放出するブローアウト・パネル――福島原発で機能せず建屋爆発に

2011年6月5日10:48PM

 五月上旬、東日本大震災で被災した東北電力女川原子力発電所(宮城県女川町)を訪れると、二号機と三号機のタービン建屋の外壁に、鉄骨の足場が組まれていた。また、原発の岸壁では重油タンクが横倒しになっていた。

東日本大震災でブローアウト・パネルが壊れた女川原発3号機のタービン建屋。(5月7日。撮影/明石昇二郎)

 
 女川原発近くに建つ民家は徹底的に破壊され、津波の激しさを物語っている。

 地震と津波被害について東北電力に確認すると、横倒しになった重油タンクは「暖房用の重油タンク」で、非常用電源とは直接関係ない施設。一方、三号機タービン建屋外壁の足場は、「地震の揺れで、タービン建屋の(圧力を調整する)ブローアウト・パネルが開いてしまった」ため、それを閉めた上で足場を組んでいるという。

 ブローアウト・パネルは、非常時に建屋内の圧力が高まった際、圧力を逃がすため自動的に”パカッ”と開くのだが、今回は地震の揺れで開いてしまったそうだ。同様の設備は、タービン建屋のほか、原子炉建屋にも装備されている。

 放射性物質が大気中に放出されたとしても、建屋が爆発することで大量の放射性物質が放出されるよりはましだ――という発想で設置されている。

 なお二号機の足場は、地震の揺れで壁にヒビが入り、それを補修するために設置しているとの回答。「ヒビの深さは壁を貫通するほどではない」と、東北電力では説明する。

 女川原発三号機は二〇〇二年一月、同原発二号機は一九九五年七月に稼働を開始している。原発の型は、東京電力・福島第一原発と同じ沸騰水型(BWR)である。

 そこで、ブローアウト・パネルが福島第一原発にも装備されていれば水素爆発は避けられたのか、昭和の時代に作られた原発は古すぎて装備されていなかったのか、などを東京電力に確認した。

 東京電力によると、第一原発一~三号機のいずれにもブローアウト・パネルは付いていたものの、パネルが開くほど圧力が上昇しないまま水素が充満し、地震の揺れでもパネルは開かず、水素爆発にいたったという。ボタン一つでで開くような仕組みもなかった。

 ではなぜ、二号機は爆発しなかったのだろうか。東京電力では、三号機の水素爆発の爆風で、二号機のブローアウト・パネルが開き、水素が大気中に放出されたため、爆発を免れたとみているのだという。
 放射性物質を閉じこめなくてはならない建屋に、圧力上昇時には放射性物質を含むガスを逃す設備を設置しなくてはならないこと自体が矛盾だ。しかも、福島第一原発事故では役に立たなかった。
 
(明石昇二郎・ルポライター、5月27日号)

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