【中国】「原発大国」の道へ――発電容量増に加え「輸出大国」も狙う
2011年6月7日8:10PM
福島第一原発の事故にもかかわらず、中国は「原発大国」への道を歩むようだ。二〇二〇年までに原発による発電容量を少なくとも七〇ギガワット(GW、1GW=10億W)に増強する。
五月一二日から二日間、北京市で開かれた「中国原子力国際大会」で、中国原子力エネルギー協会の徐玉明・副秘書長が明かした。原発による発電量は昨年末時点で約一一GW。
中国では現在、計三四基(発電容量は計三八GW)の建設計画が認可済み、あるいはすでに着工中だが、さらに増えることになる。二〇年時点で総発電容量に占める再生可能エネルギーと原発の割合を計一五%に高める計画だ。
徐氏は「中国原子力産業の長期的な発展が福島の事故で影響を受けることはない」と断言した。その上で、「原発建設の前提条件を満たしていない地域は計画を断念せざるを得なくなる。そうなれば、新規計画はより安全で効率的になる」と楽観的な見方を示した。
中国が原発建設に注力する背景には、経済発展の維持に電力が欠かせないという事情がある。広東省や浙江省など沿海部を中心に慢性的な電力不足にあるからだ。国家エネルギー局によると、今年の電力消費量は前年比一二%増の約四兆七〇〇〇億キロワット時に達する。しかし今夏は全国で三〇~四〇GW分の不足が予測されている。
同時に、中国は「原発輸出大国」になる野心を隠さない。昨年六月には、国営原子炉メーカーの中国核工業集団(CNNC)が、パキスタン東部のチャスマで原子炉二基の建設を支援する契約を結んだ。CNNCは昨年、一〇〇万キロワット級の原子炉「CP1000」の開発に成功している。この原子炉は設計寿命が六〇年と長い。
またCNNCのライバルの中国広東核電集団は、ベトナムやタイ、マレーシア、シンガポールと原発関連の技術供与や設備輸出の話し合いを続けているという。
一方、中国・環境保護省は五月一一日に発表した今年度予算案で、原子力の安全確保費として一億五〇〇〇万人民元(約一八億五〇〇〇万円)を計上した。中国国内での放射線量測定や核関連施設の技術評価、民営原発の管理・技術支援などに充てるという。
(志村宏忠・ジャーナリスト、5月27日号)