いまだ課題山積の水俣病問題――「特措法」考えるシンポ開催
2011年7月4日6:49PM
シンポジウム「水俣病特別措置法のあり方を考える」(日本弁護士連合会主催)が六月四日、東京の弁護士会館で行なわれ、医師の原田正純さんが二〇〇九年に成立した水俣病被害者救済特措法における胎児性・小児性の課題を講演した。
胎児性や小児性の被害者の中には、水俣病の症状の一つとされる「感覚障害」がない被害者もいるとし、特措法の「救済策」ではこうした被害者が救済されないと指摘した。
胎児性・小児性に感覚障害がないケースがあることは、環境庁(当時)が一九八一年通知で認めている。しかし現在、救済策の検診に携わる医師には感覚障害だけを診るように指示がされているという。「公害は生理的に弱い人が影響を受ける。弱者にどう向き合うかが公害対策の決め手」と述べた。
パネルディスカッションでも特措法の課題が浮き彫りになった。
加藤タケ子さん(ほっとはうす施設長)は、胎児性の被害の全容が把握されていないうちに特措法によるチッソ分社化が進んでいること、患者の病状悪化に伴い補償ランクの変更申請をしたが、国の患者補償ランク付け委員会に却下されたことなどを話した。
弁護士の高橋謙一さんは、特措法の運用次第では、チッソの救済法になりかねないことに加え、「被害者の基本的人権を侵害するおそれもあり、『違憲』にならないよう、被害者救済を中心に運用されなければならない」と主張した。
元滋賀大学学長の宮本憲一さんは、米国のアスベスト会社がアスベスト被害の補償のためにトラスト会社を設立・分社化した例を紹介し、五万人以上の被害者に分社化の是非を投票してもらい、大部分が賛成した経緯を紹介した。日本では、被害者に問うことなく、チッソ分社化が決められている。
チッソには別の選択肢があるのでは、と提案したのは『熊本日日新聞』論説委員長の高峰武さん。新会社の工場内に水俣病の資料館を作るなど、水俣病とともに前進し教訓を示していく選択肢もあるとし、「まだ間に合う」と話した。
(奥田みのり・フリーライター、6月10日号)