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【スウェーデン】脱原発から転換するエストハンマル町――核廃棄物処分場の予定地に名乗り

2011年7月5日11:16AM

 スウェーデンの人口二万人余りの小さな町が、欧米の主要メディアの関心を集めている。同国中部のエストハンマル町が高濃度放射性廃棄物の最終処分場の予定地に名乗りを上げ、建設が実現しそうだからだ。

 この町は首都ストックホルムから北に約一二〇キロに位置し、同国最大級の原発であるフォルスマルク原子力発電所(計三基)からも近い。

 エストハンマル町では二〇〇九年、最終処分場の建設受け入れを問う住民投票が行なわれ、約八割が賛成した。町民の同意やこれまで行なってきた立地調査の結果、スウェーデン核燃料廃棄物管理会社(SKB)は最近、今年後半にも中央政府に対して最終処分場の建設許可を申請する予定を明らかにした。政府が認可すれば、一五年以降に建設が始まる。

 SKBは発電事業者四社で構成する最終処分場の建設・運営会社だ。スウェーデンの法律では電力会社が新しい原子炉を建設する前に、SKBが最終処分場を建設することが義務付けられている。

 国内の各原子炉から排出される使用済み燃料は中間貯蔵施設で三〇~四〇年間冷却貯蔵された後、地下五〇〇メートルの結晶質岩の中に設ける処分場に置かれる。いわゆる「地層処分」だ。

 エストハンマル町が建設予定地になったことについてはCNNや『ニューヨーク・タイムズ』、ドイツ誌『シュピーゲル』などが最近、相次いで報じた。町民の多くが最終処分場建設を受け入れたのは、地元での雇用機会の創出や補助金に期待してと言われる。

 スウェーデンは一九八〇年の国民投票で二〇一〇年までに国内の原発を段階的に廃止することにした。だが、〇九年に政府が発表した長期エネルギー計画で脱原発から転換し、運転継続と既設設備の発電容量の大幅な増強を決めた。原子力は電力供給量の約四割を占めており、残りは主に水力発電で賄っている。

 渇水による水力発電量の減少に加え、冬季の需要増のため近隣諸国から輸入量を増やしたことで電気料金が上がったことや、二〇年に二酸化炭素(CO2)の排出量を一九九〇年比で四割減らす目標を掲げていることなどが原発回帰の背景にあるようだ。

(志村宏忠・ジャーナリスト、6月10日号)

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