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「原発がなくても夏は乗り切れる」ことを恐れる経産省――玄海原発再稼働の”密室説明会”
2011年7月14日9:22PM
経済産業省は六月二六日、佐賀市内で原発の安全対策などについて住民説明会を開いた。定期点検停止中の九州電力・玄海原発二号機と三号機の再稼働に向けて住民の理解を得ることが目的。いったんは「今夏の計画停電は回避可能」と説明していた経産省だが、夏の電力需要ピークを前に、マスコミと連携して電力不足キャンペーンを開始。狙いは、原発再稼働であるのは明らかだ。
説明会に参加した県民は経産省が地元広告代理店に依頼して選んだ七人。九〇分間の説明会の様子はケーブルテレビやインターネットで中継されたものの、会場は非公開で報道関係者の取材は不可だった。放送された時間帯に、五〇人以上の市民団体メンバーらが「密室説明会」などと抗議する集会を開いたのはこのためだ。
七人の参加者からは、原発の安全性や地震や津波対策などに関する質問が出て、原子力安全・保安院の黒木慎一審議官らが福島原発事故の原因が津波によるものであったことや、全電源喪失に対する安全対策を取っていることなどを説明した。
しかし説明会終了後の記者会見で参加者からは「国の説明は専門的な上に断定を避けるので分かりにくかった」「この説明だけでは納得できない」などといった批判が続出した。一方で古川康佐賀県知事は「中身のある議論だった」と、説明会に一定の評価をした。
だが、「玄海原発プルサーマル裁判の会」の石丸初美代表はこう怒る。
「私も参加を打診されましたが、断りました。説明会は九〇分で、一回の質問は一人一分で回答が二分。七名の参加者で割ったら、一人当たりの時間はわずかしかないため、『県民の命の問題を議論するのにはあまりに短すぎる』と断りました。是正を求める要請文を古川知事に手渡ししようとしましたが、県職員たちにブロックされました。一体、どうやって県民の民意を伝えたらいいのでしょうか。九州電力は全電源喪失対策として『来年、電源車を配備する』と言っていますが、であれば、少なくとも来年までは再稼働はできないはずです。浜岡原発が止まったのは『津波対策が途中』だったわけですから、玄海原発でも同じ対応をしないとおかしいのです」
七人の県議も説明会の是正を知事に求めた。その一人である徳光清孝県議も首を傾げていた。
「九州電力は『夏の電力不足を乗り切るために再稼働する』と言っていますが、以前は『火力発電所稼働の見通しが立ったので一五%の節電の要請を撤回します』と言っていた。玄海原発の二号機と三号機が止まったままでも、今夏の電力需要は問題ないということです。それなのに、急に経済産業省が夏の電力需要逼迫を言い出して、説明会を開いたのは、原発の再稼働のためとしか考えられない。『夏を乗り切れたから原発がなくても大丈夫』ということを国民が実感し、脱原発が一気に広まることを恐れているとしか思えません。『経済活動に影響が出る。東日本の復興にも影響を与える』という脅しのような言い方をしていますが、福島県民をはじめ国民の大多数は、安心・安全な社会作りを求めている。説明会によって、脱原発・自然エネルギーへの転換を求める国民の民意を捻じ曲げ、再稼働に踏み切ろうとしているのです」
電力需要逼迫キャンペーンを科学技術・イノベーション推進特別委員会委員長の川内博史衆院議員(民主党)も、こう指摘していた。
「”電力ないない神話” は原発を動かすためのウソ。国民をごまかして、権力側が自らの利権を確保する時代は、終わっている。既存の火力、水力をフル稼働させ、効率のいい火力発電(ガスコンバインドサイクル)を整備すれば、原発の再稼働なしで電力需要のピークに十分対応できます」
六月二七日、古川知事は市民団体メンバーの抗議に応える形で、県主催の説明会開催を決断。石丸さんは知事の判断をうけ、「多数の住民が参加できる形の説明会であるべきです。再稼働が為されてしまう前に」と、次回の説明会に向けた要望を語った。
(横田一・フリージャーナリスト、7月1日号)
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