子どもの被曝避けるため「集団疎開」を――郡山市の父母が仮処分を申請
2011年7月15日12:00PM
子どもたちの被曝を避けるために「集団疎開」を――。福島県郡山市の小中学校に通う児童生徒一四人の父母が六月二四日、「年間の積算被曝量が一ミリシーベルト以上の場所で授業をしないよう求める」仮処分決定を福島地裁郡山支部に申請した。
国際放射線防護委員会(ICRP)が定める「一般人の線量限度」は年間一ミリシーベルト。しかし文部科学省は四月、児童生徒等の受ける線量の上限を「二〇ミリシーベルト」に設定。「高すぎる」と批判されたため五月二七日には「年間一ミリシーベルト以下を目指す」という目標を掲げた。しかし、計画的避難区域外であっても多くの地域・地点ですでに年間二〇ミリシーベルト超が推定されており、政府はそうした地域・地点に居住する人の避難を支援するため、「特定避難勧奨地点」を定めることを発表したばかり(六月一六日)。
申立書によると、児童生徒が通う七校の放射線量を試算すると、年間三・八〇~六・六七ミリシーベルトに達するという。また、弁護団の試算によると、同県内の市部にある二六六校の小中学校のうち、年間一ミリシーベルト以下は五校だけという。つまり、ICRP基準の年間一ミリシーベルト以下に抑えるためには、学校ごとの集団疎開が必要となる。
弁護団の一人、井戸謙一弁護士(滋賀弁護士会)は日本で唯一「原発を運転してはならない」との判決(北陸電力志賀原発二号機運転差し止め訴訟、二〇〇六年三月二四日・金沢地裁)を書いた元裁判官。「少なくともICRPの基準を順守すべき。今の国の姿勢は将来的に多くの被害が出るのを見すごしている」と話す。いわゆる「ホットスポット」は郡山市だけでなく広域に存在するので、今後同様の訴訟が起きる可能性がある。
仮処分の第一回審尋は今月内に開かれる。子どもたちの被曝量とその危険度をどう判断するのかが最大のポイントで、あやふやな国の安全基準の妥当性そのものが問われる。日本の裁判所はこれまでの原発運転差し止め訴訟において徹底して国と企業側に立ち、「司法の独立」という言葉を絵空事にしてきた、言わば原発事故の”共犯”関係。初めての広域被曝という事態を受け、その判断の軸をどこに置くのかも注目される。
(片岡伸行・編集部、7月1日号)