裁判官が憲法・労働法を蹂躙――大阪地裁が労組活動を禁止
2011年7月19日2:07PM
労使紛争の最中に、ごく一般的な労働組合の宣伝行動をも禁止する仮処分決定を出した大阪地裁に対して、「会社の不当・不法行為を免罪し、加担する暴挙で、憲法、労働法を踏みにじる前代未聞の行為」と抗議の声が強まっている。
組合員への解雇、差別、不当配転などを続けてきた北港観光バス(大阪市旭区)が、全日本建設交運一般労働組合(建交労)大阪府本部が行なう宣伝カー、ビラなどによる宣伝行動を嫌い、その禁止を申し立てた仮処分申請事件で、大阪地裁第一民事部(横田典子裁判官)は五月一〇日、会社側の言い分を認める決定を出した。
これに対して組合側は、「労働者の要求や運動を敵視し、憲法で保障された表現の自由や労働基本権を蹂躙するもの」として、五月二〇日に保全異議を申し立て。今回のような判断がまかり通れば、今後の労組活動への悪影響は計り知れないとして、弁護団を全国規模で四〇名以上に増強し、裁判官の合議制と公開の法廷での審理を求めている。
併せて、大阪労連を軸に対策会議を設置し、裁判所に不当決定取り消しを求める要請署名も開始。毎週金曜日には、早朝八時から裁判所前で宣伝行動を繰り広げた後、大阪地裁へ署名を提出し続けており、六月中に一〇〇〇団体の署名を集めることが目標だ。
宣伝ビラには、不当解雇・差別・配転など、組合攻撃の実態を明らかにした当時の組合ニュースや、「言論・表現の自由は、労働組合には認められていないのですか」との問いかけが掲載されている。大阪地裁では通常、労働事件は第五民事部で扱うが、この件は一般事件担当の第一民事部。弁護団によると、司法の反動化が進む中で、世の中の動きや労働組合の意義を理解していない裁判官が増加。そのため、「従来の常識で、まさかと思う油断は禁物。裁判官に、一から労働基本権とは何かを理解してもらう取り組みと、世論の広がりによる裁判所の監視が重要」としている。
(たどころあきはる・ジャーナリスト、6月24日号)