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微粒子の飛散で内部被曝拡大――環境省が放射性廃棄物焼却の方針

2011年7月22日6:59PM

 環境省は、東京電力と国による福島第一原発事故、汚染水の海洋投棄に続き、第三番目の大きな過ちとなる放射能汚染廃棄物(=がれき)の焼却処理を決める方針だ。この非常識な焼却処理は、一般廃棄物の処理権を持つ市町村が選択すれば進められてしまう。

 収束できない福島第一原発から今も放出されている放射性物質は、福島県内だけでなく三〇〇キロ離れた神奈川県足柄の茶畑を汚染し、各地に高濃度放射能汚染区域=ホットスポットをもたらし、汚染が拡大している。事故の早期収束は待ったなしである。

 ところが環境省は、福島県内における放射能汚染がれきを市町村の清掃工場で焼却したり、埋め立て処分したりし、放射性物質の発生源を増やそうとしている。

 放射性物質も他の物質と同様、焼却して消えるわけではなく、焼却すると微粒子と排ガスになって、煙突から大気中に飛散する。焼却炉には、有害物の飛散を抑えるためにバグフィルター等の除去装置が付けられているが、すべて取りきれるわけではない。実際、東京都内の清掃工場でも除去できるはずの水銀が、自主規制値を超えて排出され工場の操業が止まった。清掃工場の煙突から吐き出された放射性物質は、大気中を広がり、体内に入ると内部被曝をもたらす。

 がれきの焼却が始まれば、放射性物質は福島第一原発だけでなく、県内各地の清掃工場から多発的に放出されることになる。これを看過すれば、福島県は今以上に子どもを安心して育て、農業や畜産を営む場所ではなくなる。

 なぜいま焼却か? 地震と津波によって発生したがれきは、福島県は二八八万トン。岩手県、宮城県のそれぞれ四九九万、一五九五万トンに比べると量は少ないが、原発事故の放射性物質に汚染されたため処理の方策が決まらず、避難区域や計画避難区域のものはそのままにして、それ以外のものは、県内一三六箇所の仮設置き場に分散配置してきた。しかし放射能で汚染されたがれきを住宅地や学校などのそばに積み重ねたのでは、近隣に住む人にとって大迷惑で、子どもを疎開させた人もいるという。

 焼却は、仮設置き場に置いたがれきを早く片付け、かさを減らすのが目的という。しかし焼却や除染なしの埋め立ては、二次被害の要因となる。仮設置き場のがれきを撤去するのなら東電と国の責任で、原発の避難区域に移し、シート等で覆い、原発の収束を待って洗浄等によって除染の上で、安全策を考えて処理する必要がある。

 がれきの汚染濃度は一メートル離れたところで、一・一~二〇・八ミリシーベルト/年もの放射線量があった。放射性物質の指標値としてきたクリアランスレベル〇・〇一ミリシーベルトの一一〇倍~二〇八〇倍である。直接測ればもっと高い。

 世界のどこも行なっていない高濃度放射性廃棄物の清掃工場での焼却処理。放射性物質による汚染の拡大に歯止めが必要な時に逆に汚染源を増やす。これは犯罪行為に近い。

 たとえば、各地に降り積もった放射性物質は、雨によって下水に流れ、下水処理の過程で汚泥に濃縮され、江東区では汚泥廃棄物の焼却処理によって周辺に高濃度汚染が生じている。ところが、高濃度放射性廃棄物である汚泥は、すでに燃やし始めている自治体もあるものの、焼却が罰せられることはない。現状の環境基本法や廃棄物処理法では、放射性物質とその汚染物を有害物とせず、禁止や規制対象から外しているからだ。明らかに法律上の不備である。

 環境省は現行法の不備を直さないまま福島のがれき焼却を進めようとしているが、これは福島での放射能汚染の拡大のみならず、東日本各地の自治体での汚泥などの放射性廃棄物の焼却に拍車をかけ被害を広げることになる。

 国と環境省に焼却撤回の声を集める必要がある。がれき焼却の詳しい情報は「ごみ探偵団」のブログ(http://gomitanteidan.blogspot.com/)と、環境総合研究所・鷹取敦氏の見解(http://eritokyo.jp/independent/takatoriatsushi-col1.htm)を。

(青木泰・ジャーナリスト、6月24日号)

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