再燃する論議――児童ポルノ禁止法案提出
2011年7月25日5:29PM
幾たびも議論が繰り返されてきた児童ポルノ禁止法改正案が国会会期延長のドサクサに再び提出されようとしている。
一九九九年の制定以来、児童ポルノ禁止法に、「単純所持の禁止」とマンガ・アニメなど創作表現への規制拡大を行なうべきか否かをめぐる論争は止まない。所持を禁止し「児童ポルノ」の範囲を拡大すれば警察権力による濫用、冤罪の危険は避けられない。一方で、所持の禁止が「ジュニアアイドル」という形の児童虐待を止める有効な手段と主張する人々もいる。
六月二一日には、衆議院第一議員会館で、所持の禁止を訴えてきた市民団体「エクパット・東京」の主催で「子供たちを守れ! 児童買春児童ポルノ禁止法改正に向けた緊急集会」が開催され十数名の議員が参加した。
冒頭、小宮山洋子厚生労働副大臣は、一昨年に国会に提出された改正案が会期末の時間切れで廃案になってしまったことの悔しさを語り「まもなく、今の仕事も終わるので、こっちに専念できる」という発言まで行なった。この日出席した議員のスタンスは「表現の自由が児童の権利より上になっている」ことを批判する点で一致しており、公明党の富田茂之衆院議員は、単純所持に反対する議員を「国賊」と批判。自民党の平沢勝栄衆院議員は「覚醒剤だって持っていれば犯罪。なんで単純所持が権力の濫用なのか、さっぱりわからない」と、規制強化に慎重な枝野幸男官房長官を批判した。
所持の禁止を行なった場合、問題になるのは「児童ポルノ」の基準だ。この日も「G7で単純所持を規制していないのは日本だけ」という発言があったが、それらの国でも問題は絶えない。米国では離婚訴訟中の妻が親権獲得を有利にするために夫のパソコンに「児童ポルノ」を仕込んだ事件も起こっている。規制を進める人々は「意図的に所持していたか否かは取り調べや裁判で明らかにできる」と主張するが、日本の司法がそこまで信頼できるものとは思えない。
(昼間たかし・ジャーナリスト、7月8日号)