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原子力の”不正確情報”に対処する業者を選定――ネット監視に乗り出す資源エネ庁
2011年8月11日2:40PM
新聞やテレビ、広告会社などを使い、原子力発電の”安全性”をアピールする数々の世論対策が半世紀にわたって繰り広げられてきた実態が明るみに出ている。そんな中、経済産業省の外局である資源エネルギー庁が、インターネット上に掲載される”不正確情報”をモニタリング、調査、分析し、当庁のホームページ上で対処する事業を行なう業者を選定していることが、一部報道で明らかになった。
同事業は、資源エネ庁が実施する原子力政策のうち、「不正確情報対応」と呼ばれるもの。経産省・原子力安全・保安院の事業として二〇一一年度第一次補正予算に計上されたものだが、実質、資源エネ庁が実施主体となっている。資源エネ庁によると、「入札は済んだが、業者はまだ決まっていない」(担当者)とのこと。委託費も契約前であるため公表されない。
同事業の「仕様書」によると、事業名は「平成二三年度原子力安全規制情報広聴・広報事業(不正確情報対応)」で、事業目的の欄には「ツイッター、ブログなどインターネット上に掲載される原子力等に関する不正確な情報又は不適切な情報を常時モニタリングし、それに対して速やかに正確な情報を提供し、又は正確な情報へ導くことで、原子力発電所の事故等に対する風評被害を防止する」とある。モニタニング対象として「ツイッターは必須」とあることについては、「数ある情報媒体の中でも、ツイッターは参加者数が多く、気軽に書き込める媒体であるため(モニタリングしやすい)」(同)からだという。
テレビや新聞など既存大メディアでは報道されない情報がインターネット上で飛び交う現状に、経産省や資源エネ庁が対処しようとしている様子がうかがえる。
他にも同庁は、原子力に関する国民の理解を深めるため、一〇年度予算で「オピニオンリーダー等向け広報事業」「ローカルマスメディア広報事業」「原子力意識動向調査」「NPO等活動整備事業」「六ヶ所村における理解促進活動」「地域振興番組」など三〇項目以上の事業を実施している。合計予算額は一四億二六八一万二〇○○円にのぼった。
中でも、「核燃料サイクル」に関する同庁の姿勢は明白だった。「オピニオンリーダー等向け広報事業」の仕様書によると、事業の目的欄には「核燃料サイクル確立のためには立地地域の住民を始めとする国民全体の理解と信頼が不可欠である」で始まり、「(1)原子力・エネルギーに関する情報発信を行っているNPO等団体、(2)マスメディア記者・編集者、(3)小中学校の教師(以下、これらをまとめて「オピニオンリーダー」という。)を対象に、青森県六ヶ所村の核燃料サイクル関連施設の視察、意見交換会を実施し(中略)核燃料サイクル関連施設の立地を円滑に進めることを目的とする」とある。
また「産消交流番組」の仕様書には、「核燃料サイクル施設立地地域である青森県、岩手県を主な対象として、核燃料サイクルの重要性や国等の取組、同関連施設についてわかりやすく解説したテレビ番組の制作・放送等の広報活動を展開し、核燃料サイクル関連施設の円滑な立地促進及び操業・運転に資することを目的とする」とあり、ここでも「核燃料サイクル」の “重要性”理解に同庁が力を入れていることがわかる。
使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で燃料として使うというのが核燃料サイクル政策。しかし一九九七年に運転開始の計画だった青森県の六ヶ所再処理工場は今も試運転中で、何度もトラブルが起きている。福井県の「もんじゅ」も九五年にナトリウムが洩れる事故が起きたことで、現在も稼働できる状況にはない。しかし停止中であっても維持経費として一日五〇〇〇万円の費用がかかるとされ、資源エネ庁にしてみれば “後には引けない” というところか。
また同庁は、一一年度における原子力推進事業予算に一三億九三八七万六〇〇〇円を計上している。収束の見通しが立たない福島第一原発事故を目の当たりにしてもなお、資源エネ庁が原子力にブレーキをかけるつもりのないことは明らかだ。
(本誌取材班、7月22日号)