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東電経営者らの「おっかけ」本――大手取次各社が委託配本拒否
2011年8月15日5:46PM
東京電力・福島第一原発事故の責任者を追及した書籍が、大手取次各社の委託配本拒否にあっていることがわかった。
配本拒否にあったのは、鹿砦社特別取材班編著の『東電・原発おっかけマップ』。同書では、小出裕章・京都大学原子炉実験所助教、西尾漠・原子力情報資料室共同代表ら識者の解説とともに、福島原発事故の「戦犯」を追及するとして、東電経営者らの豪邸の住所や写真、地図を公開している。
鹿砦社の「おっかけマップ」シリーズでは、過去に芸能関係の「マップ」がプライバシーの侵害などを理由に裁判所から差し止め命令を受けたことがあるが、今回は「今のところ、法的手続きをとった事実はありません」(東電広報部)。
新刊本は、取次が全国の書店に見計らいで配本し、「委託扱い」で店頭に並ぶことが多い。そのため、委託配本がなければ、読者の購買機会が大きく制約される。
委託配本を拒否しているのは、日本出版販売(日販、古屋文明社長)、トーハン(近藤敏貴社長)、中央社(風間賢一郎社長)など。
取材に対し日販は、「コメントいたしかねます」(広報課)。トーハンは、「個々の出版社様とのお取引のことなので、お答えできません」(広報室)。中央社は、「『私どもに合わない』というと語弊があるが、注文がないから流さないだけ。そもそも、すべての新刊を配本するわけではありません」と主張した。
表現の自由をめぐる問題に詳しい田島泰彦・上智大学教授は「東電幹部らは純粋な私人ではないので、本の内容は公共的事柄にかかわると考えられる。その評価は読者に委ねるのが原則で、裁判も起きていないのに『自主検閲』で本を止めてしまうのはまずい」と指摘する。
伊藤高史・創価大学教授も、「本を見ていないので断定はできないが、原発批判本の出版には公共性がある。流通を寡占的に支配する大手取次は、『自主規制』には慎重であるべきだ」とコメントする。
鹿砦社の松岡利康社長は、「被災者は仕事も故郷も奪われた。いったい誰のせいなのか、そこがあいまいでは前に進めない」と出版の意図を明かした。なお取次各社は、書店や読者から注文があれば配本に応じており完全な “焚書” ではないようだ。
(北健一・ジャーナリスト、7月29日号)