世界遺産登録望み薄の東京・台東区――一人一〇〇万円で7人が渡仏
2011年8月16日2:26PM
東京・台東区では世界遺産候補に同区上野にある「西洋美術館を含むル・コルビュジエの建築作品」を申請している。登録の見込みは極めて低いといわれているが、同区の吉住弘区長に加え、六人がフランス・パリのユネスコ本部に第三五回世界遺産委員会に出席するという名目で六月二二日から三〇日まで渡仏し、その費用として「一人約一〇〇万円」(同区担当者)が拠出されていることが、このほどわかった。政府団の一員である区長に同行したのは、区議会議長、議会事務局次長、総務部長、担当課長、係長、研修員の六人。
世界遺産に登録される手順は、まず行政機関が候補地を推薦し、暫定リストを世界遺産センターに提出。世界遺産委員会が国際記念物遺跡会議(ICOMOS、以下イコモス)に評価依頼を出す(自然遺産候補は国際自然保護連合 <IUCN> に評価依頼)。イコモスの審査は、(1)記載(2)情報照会(3)記載延期(4)不記載の四ランクで評価され、その結果を踏まえてユネスコ世界遺産委員会が最終的な判断を下す、という流れ。
今年五月、「西洋美術館を含むル・コルビュジエの建築作品」は、イコモス審査において(4)の「不記載」という判断が下され、世界遺産に登録される可能性は著しく低下した。にもかかわらず、六人もの区関係者が一人一〇〇万円もの費用をかけて渡仏した。このほか、議員も自民党系から五人、区民クラブ(民主党系)から四人が参加。これらの渡航費は政務調査費から出されている。
地元商工会会長の黒田収さんは「(登録の)可能性があるならまだしも、イコモス評価で『不記載』とされ、可能性が非常に低まっていた中で、なぜ二〇人近くも役人・議員団が行かなければならないのか。区民の血税で……」と疑問を抱いている。
区議会の阿部光利議員は「とんでもない。緊張感が欠落している。東日本大震災・福島原発事故をうけ、台東区でも庁舎の節電などに心血を注いでいる。この時期にこうした支出が許されるのか。行政の甘さが露呈している」と批判的だ。
なお、報道によると北海道札幌市議会は東日本大震災をうけ、海外視察を止め、その分を子どもの奨学金として使われる「市奨学基金」に充てることを決定している。
(野中大樹・編集部、7月22日号)