ソニー「復興計画」に非正規労働者なし――期間社員一〇〇人強を雇い止め
2011年8月19日4:44PM
東日本大震災による被害を理由にソニー(株)が子会社・ソニー仙台テクノロジーセンター(仙台工場。宮城県多賀城市)で働く期間社員一〇〇人以上を雇い止めしようとしている問題で、七月二一・二二日にかけ、雇い止めを通告されている二〇~三〇代の期間社員七人が来京し、山下芳生参議院議員(共産)に事情を説明。山下議員は二二日の参院予算委員会で菅直人首相らを追及した。
雇い止めの通告を受けた期間社員の一人、小高洋さん(三〇歳)は三月一一日の震災後、一刻も早く生産・出荷を再開させるという部署の方針で工場の復旧作業に従事していた。ところが四月四日、期間社員全員に自宅待機命令が出される。この日から、会社からの連絡はほぼ途絶えたという。
四月七日、ソニー本社(東京都港区)の本部長クラス数人が仙台工場を視察した。同月二七日にも本社から数人が仙台を訪れて「復興計画」を発表し、正社員を前に「雇用は守る」と言ったという。しかしこの場に期間社員は呼ばれなかった。
その後、五月二五日に実施された面接にて、雇い止めが通告された。三カ月の雇用延長・慰労金三カ月の支給をもって、契約を満了したいという内容だった。
「納得がいかない」という小高さんら二二人がソニー労働組合に加入。現在も契約書にサインをせず、労使交渉を続けている。
ソニー本社は「もともと有期雇用。途中解雇ではないので問題はない」(本社広報センター)との見解を示すが、同社が今回の震災で受けた約一一〇億円の損害は、保険によって「ほぼ全額賄われた」(同)という。ならば大震災による被害を理由にした雇い止めは根拠がなくなるのではないか。厚生労働省にこの件について聞くと、解雇・雇い止めをするには正式な手続きを踏む必要がありソニーがそれに沿っているか確認する必要がある、としながら、具体的に指導等を行なったかについては「個別の案件については答えられない」という回答だった。
ソニー副会長の中鉢良治氏は菅首相の諮問機関、「東日本大震災復興構想会議」の委員である。自社の非正規労働者を平気で切り捨てる会社の考える「復興」とはいかなるものなのか。
(野中大樹・編集部、7月29日号)