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背景に消費税増税あり――なぜ今、共通番号制度か
2011年8月24日10:12AM
政府が税と社会保障の一体改革の中で推し進める共通番号制度。
番号制はかつて国税庁が検討を試みたが、当時の自民党副総裁・金丸信氏に潰された。また安倍晋三政権下、「消えた年金」の解決策として厚生労働省で議論されたが、結局進まなかった。なぜ今、共通番号制なのかを考える勉強会が七月二九日、東京都内で行なわれた。
講師には、政府・与党社会保障改革検討本部「社会保障・税番号制実務検討会」に設けられた「個人情報保護ワーキンググループ」メンバーを務めた三宅弘弁護士。
民主党政権が制度導入を加速させている背景には、「(所得が低い人ほど影響を受ける)消費税の増税とセット。徴収した分を社会的弱者に還元できるよう、人々の所得を把握する」ことにあると三宅氏は解説する。大綱に「より正確な所得等の情報に基づいて適切に所得の再配分を実施」とある通りだ。
これまで政府が抱える国民の個人情報は、行政機関個人情報保護法により、第三者提供の規制や、自己情報の開示権、訂正権が確保されていた。新制度は、年金、医療、介護、福祉、労働保険、税務、金融の自己情報が一一桁の番号で自己アクセスできる構想。その他の個人情報は従来通りの個人情報保護法等で保護される。大綱では、こうした個人情報を一機関に一元管理させず、第三者の不当な取得も行なわれないよう制度設計が検討されている。
しかし「なりすまし」事件や意図的でない漏洩はこれまでにも起きた。新制度による利便・便益とリスクの比較が重要だが、不審な点もある。番号制の対象は法人も含むが、「経済界からの反対が大きくなるから、そこは緩やかに」との識者の話があるようなのだ。
それが本当なら増税に備えて弱者救済のため収入を把握するという制度導入の趣旨に反する。膨大な情報管理システム構築に巨額の税金を投入し、国民の個人情報漏洩リスクを抱える回りくどい増税策の前に、法人税見直しやムダな公共事業削減が先決ではないか。
(まさのあつこ・ジャーナリスト、8月5日号)
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