【タグ】前原誠司|小沢一郎|小沢鋭仁|民主党代表選|海江田万里|総理大臣|輿石東|野田佳彦|馬淵澄夫|鹿野道彦
候補者乱立するも、実は人材枯渇――「小沢問題」が争点の民主党代表選
2011年9月2日12:08PM
あの劇的な政権交代から二年たち、任期四年の衆院議員にとって「折り返し」の夏が来た。民主党は鳩山由紀夫と菅直人という生え抜きのエースを二代にわたって官邸に送り込んだが、党勢の衰えとともに今や人材は枯渇気味。その隙間をかいくぐり、「これが最後のチャンス」とばかりに有象無象がうごめき始めた。彼らが狙うのは民主党代表、つまりは日本国総理大臣の地位である。
その民主党代表選が行なわれるのは八月二九日。まず立候補の意向を示したのは馬淵澄夫前国交相だ。当選三回ながらも耐震偽装事件で鋭く追及する姿勢で知名度を上げた馬淵氏は、すでに地元の秘書に命じて選挙資金を集めさせているという。
次いで意欲を見せたのは当選六回の小沢鋭仁元環境相だ。そして原発問題で菅首相にはしごをはずされた恰好となった海江田万里経産相も、一九日に立候補の意向を表明。すでに一八日には赤松広隆元農水相や輿石東参院議員会長に会って相談していた。
彼らのハードルは、立候補に必要な二〇人の推薦者を集められるかどうか。それには是非とも一三〇人の議員を擁する小沢一郎元代表の協力を得たいところだ。
そんな海江田氏が衆院第一議員会館六階の小沢事務所を訪れたのは、一九日午後四時のこと。一六分後に小沢事務所を出てきた海江田氏は微笑んではいたものの、記者団の問いかけには一切答えなかった。
そしてその一時間後、今度は小沢鋭仁氏が小沢事務所に入り、こちらは一九分で退室している。その途中、同じ六階に事務所を持つ海江田氏が廊下に出てきて小沢事務所の方をちらりと見た。
「トイレに行ったようだけど、きっと様子を見に出てきたんだよ」
廊下で待つ記者の言葉は、仲間内の競争の厳しさを示している。
彼ら三人とは異なり、鹿野道彦農水相、野田佳彦財務相、そして前原誠司前外相の三人は、自前で二〇人の推薦人を調達できる見込みだ。
このうち鹿野氏は八月上旬にすでに三二人の支持者を集めていた。一説には小沢グループの支持も得たとの噂もあり、有利に展開しているように見えていた。
だがその後、三二人のうち松原仁氏ら二人が名簿からの削除を要求。一八日夜に開かれた決起大会でも、集まったのは二〇人余りだった。よって一九日に「立候補を求める会」が開かれたが、この時は鹿野氏はその態度を明らかにしなかった。
「鹿野氏を支持する議員の中に小沢グループの新人が数名いたが、これに小沢氏側が激怒した。『親分が支持する候補を決めていない段階で、勝手に動くな』と注意されたらしい」(永田町関係者)
その言葉通り、二二日に鹿野氏が小沢氏に支援を求めて面談した時、小沢氏はこう言い放っている。
「これから引き受ける人は大変だ」
藤井裕久首相補佐官や岡田克也幹事長の支援を得て、最有力候補と言われた野田氏も苦戦している。急激な円高は、一〇日発売の月刊誌で政権構想を発表してすぐ立候補表明するはずだった野田氏の予定を狂わせた。さらに野田氏がテレビで提唱した大連立構想が、党内外から猛反対を喰らってしまう。
それは外国人献金問題で「一回休み」を決めていた前原氏を翻意させることになる。
前原氏は自らが率いる凌雲会のメンバーに意見を聞くが、すでにその腹は決まっていたようだ。
「前原さんは『出る』とは言わなかった。だけど出るつもりもないのに僕たちに意見を聞くはずがない」(凌雲会メンバー)
一七日夜に野田氏は前原氏を都内の料亭に呼んで支援を求めたが、話は決裂。二〇日に会談が再設定されたが、これも同じ結果となった。
二三日に前原氏は立候補表明したが、代表選の大きな争点は小沢氏の党員資格停止解除問題になりつつある。前原氏以外は党員資格停止解除に賛成だ。小沢氏の持つ一三〇人もの議員の票はそれだけの威力があるのだ。
となれば、小沢氏の意思が民主党を決し、日本を決するということになる。はたしてそれでわが国は民主主義国家といえるのか。
(天城慶・ジャーナリスト、8月26日号)