美しい森潰す公務員住宅建設に100億円――住民は「復興費に回せ」と猛反発
2011年9月12日2:27PM
埼玉県朝霞市にある米軍基地跡地の美しい森を潰し、一〇五億円をかけて八五〇戸の国家公務員住宅を新築する事業が九月一日の着工に向けて動き始めた。
最初に計画が浮上した時点でも朝霞市民の反対は大きく、二〇〇八年には是非を問う住民投票条例が法定数の三倍の住民署名により提案されたが、議会が否決した経緯がある。その後〇九年の事業仕分けでは「凍結」とされていた。それにもかかわらず今年八月二一日には、住民向け説明会が財務省と朝霞市、仕分け前に落札していた大林組によって行なわれた。
財務省からは関東財務局の熊井大・宿舎総括課長が出席し、現在二一万戸ある宿舎を五年で一五%、全体で三〇%削減し、いずれは一四万戸まで削減すると説明。これに対し住民は「三〇%も削減するものを、なぜ一〇〇億もかけて新しく建設するのか」「東北が苦労しているのに不要不急の国家公務員宿舎が必要か」「復興財源として増税する前にこういう財源を回して」と猛反発。熊井課長は「埼玉県内にある公務員宿舎を一〇〇〇戸程度廃止するからトータルでは減少」「宿舎を建てるにあたり、宿舎を売却することでそれ以上の売却益を得ることができる」と木で鼻を括るような回答を繰り返した。
朝霞市の説明者として出席した田中幸裕審議監は、公務員の入居で人口が増え二・六億円の増収、一二億円の経済効果があると市長が語った根拠を尋ねられると、「情勢も変わってきたので、十分な精度を持っているか自信を持っていない」としか回答できなかった。
また、同市が休日夜間診療所、児童館、保育所、女性センターを付帯施設として建設するとのアメに対しても「休日夜間診療所も女性センターも既存施設につくればいい。保育所が不足しているのは別の場所」と次々と声があがり、「東日本大震災の被災者は住居に困り、世界から義捐金が集まってきている。復興費に回すべきだ」との声には大きな拍手が上がった。
同県の新座公務員宿舎では、三七戸分を東日本大震災被災者に提供し、四七戸は空室だという。「朝霞基地跡地利用市民連絡会」(代表大野良夫)らが建設中止を求めた野田佳彦前財相が首相となったが、既存施設も有効利用せず、これで増税なのか。
(まさのあつこ・ジャーナリスト、9月2日号)