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【雨宮処凛の風速計】 自主避難にも賠償を!
2011年9月22日1:12PM
八月五日、原発事故の賠償問題について話し合われる「原子力損害賠償紛争審査会」の中間指針がまとまった。この中間指針にがっかりしたのは「自主避難」の人たちへの賠償が盛り込まれず、改めて検討するという方向しか示されなかったことである。
中間指針がまとまる一週間前、文部科学省前で福島から自主避難している人たちが「『自主』避難者にも賠償を!」というアピールを行なった。
ご存知のように、政府は二〇キロ圏内を警戒区域とし、二〇キロ圏外でも年間二〇ミリシーベルトを超えると推計される場所を計画的避難区域などとして避難を促している。
が、それ以外の場所が「安全」である保証はまったくない。各地にホットスポットは点在し、三〇キロ圏外だって警戒区域より線量が高い場所もある。
よって、福島では多くの人が自主避難を余儀なくされているわけだが、強制的な避難と違い、自主避難についてはどんな補償があるのか確定していない上、義援金や東電の仮払い金の支給対象にもなっていない。人によっては建てたばかりの家から離れ、無人の家のローンを払いつつ避難先の家賃を払うという生活が続き、また、母子だけが避難するという二重生活を続けている人もいる。
この日アピールしたシングルマザーの女性は「金銭的な余裕はないが、子どもの命にかえられるものはない」「なのに自主避難は『勝手に避難しただけ』という扱いにされるのは憤りを感じる」と賠償を求めた。七月はじめ、福島市から山形に避難した女性は現在、先月のパート代で生活している状態だという。避難先での仕事はまだ決まっていない。赤十字から家電セットなどの支援はあったものの、今後の生活の見通しは立たないままだ。
この日もらった意見書には、福島の人々の様々な思いが綴られていた。「避難区域外であることで、何の補償もないので、避難したくてもできない」という声もあれば、子どもに放射能を浴びせている罪悪感に苦しみ、「生き地獄のような毎日」を送っているというものもあった。
「強制」か、「自主」か。またしてもここに「自己責任」の線が引かれようとしている。そんな線引きを、許してはならない。
(8月19日号)