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FTA・TPPで治療薬手に入らず――韓国でのエイズ国際会議が大荒れ

2011年9月22日4:47PM

「多様な意見、結束した行動」をテーマに、第一〇回アジア太平洋地域エイズ国際会議が八月三〇日まで、韓国・釜山で開催され、日本からの九七人を含め世界六五カ国から感染者やNGO関係者、研究者、高校・大学生ら二九九八人が参加。医学や教育、人権、女性問題等について演題やシンポジウムなどが行なわれた。

FTAへの抗議声明を掲げる市民ら。命を貿易にかけるな、というメッセージが目立つ。(撮影/杉山正隆)

 韓国の陳壽姫保健福祉部長官による開会スピーチが、FTA(自由貿易協定)・TPP(環太平洋戦略経済連携協定)などへの抗議によって一〇分間中断するなど荒れ模様の展開。これはFTAなどによって特許などの知的所有権が強化され、安価なジェネリック薬が買えなくなり感染者の大幅増を懸念する人々らによる抗議行動で、数人が一時、現地の警察に拘束された。

 会議では、感染のリスクが高い男性同性愛者や性労働者、薬物使用者ら弱い立場にある人たちへの支援策が重要な議題となった。

 フィジー諸島共和国のナイラティカウ大統領ら政府・国連首脳も出席し、国際社会に取り組みを訴えた。国連エイズ計画によると、同地域のHIV陽性者数は二〇〇九年時点で四九〇万人前後と推定。〇五年以降、ほぼ横ばいで推移している。〇一年に四五万人だった年間の新規感染者数は、政府の対応などで〇九年には同三六万人と二割減、子どもの新規感染は〇六年以降一五%減少するなど、対策の成果が上がっていると主張する。

 一方で、標準的な「抗レトロウイルス」治療薬を必要とする人のうち六〇%以上が入手できていない。対策に必要な資金の三分の一しかなく、各国からの援助額も一〇年度からは減少に転じた。

 公式の感染者数が約二万人の日本では、今も感染が拡大し続けている。来年の世界会議が米国・ワシントンで、二年後のアジア会議はタイのバンコクで開催される。

(杉山正隆・ジャーナリスト、9月9日号)

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