拘置所収容男性の死因は「凍死」――神戸地裁が国に賠償命令
2011年9月29日5:51PM
神戸拘置所で二〇〇六年、収監されていた二九歳(当時)の男性が死亡したのは「職員が氷点下の真冬に窓を開けっ放しにしていたため」として、母親が国を相手に慰謝料などを求めていた訴訟で、神戸地裁の矢尾和子裁判長は九月八日、「死因は凍死」と認め、国に対し四三〇〇万円の支払いを命じた。拘置所側は「主張が認められず残念」とコメントしている。
男性は買春など児童福祉法違反の容疑で〇四年に起訴された。容疑を否認していたが、神戸拘置所に拘留されていた〇六年一月七日、独房内で死亡した。男性が日誌に「こごえそうだ」などと綴っていたことや、医師が「手の指が凍傷になっている」と話していたことなどから、母親が「職員が適切な処置をしていれば息子は死ななかった」として、提訴していた。
国側は「死因は男性が嘔吐物を詰まらせた窒息死」と主張したが、矢尾裁判長は(1)検視では腸の温度が命にかかわるほど低い(2)死亡する前日から独房の窓が開けたままで独房内は氷点下になっていた、などと凍死を認定。さらに、男性は数日前から衰弱でほとんど動けないのを職員は監視カメラで見ていたのに医師に診せるなどの適切な処置を怠ったと指摘した。
母親は記者会見で「元気だった若者が国の施設内で亡くなるなんて」などと話した。
(粟野仁雄・ジャーナリスト、9月16日号)