震災前から東北地域の医療は崩壊――仙台で「医療再生」シンポ
2011年10月13日6:35PM
医療過疎が深刻となっている地で大きな被害が出たという現実と、その東北を今後どうするのかを考えるシンポジウム「震災復興と医療再生」が九月二三日、宮城県仙台市で開かれ、約二〇〇人の医師・歯科医師や市民らが参加した。
シンポでは、済生会栗橋病院の本田宏医師が「医療・日本崩壊の深層と再生への処方箋」と題し基調報告。「国が医療に予算を回していない」と指摘し、「医師が不足している中で震災に襲われた。早急に医師や看護師の大幅増員を」と訴えた。
続いて宮城県の担当者や医師会、歯科医師会、保険医協会の会長らがパネル討論。震災で大きな被害が出た医療機関に被災者が治療に殺到し、全国各地から駆けつけた医師らが全力で対応することができたとする一方で、歯科は法整備の欠如から訪問診療が「常時寝たきり」に限られ、十分に治療ができなかった実態などが報告された。
県内では仙台医療圏を除くと、震災前から医師不足が目立っており、さらに震災で病院や診療所が全半壊。国からの補助がほとんどない民間の医療機関では廃業も相次ぎ、住民の生命や健康を守るには程遠い状態だという。
各方面からの報告を受け、被災地は震災前から医療崩壊が起こっていたことを確認。国に被災地の医療・福祉・介護の復旧に特別な援助を行なうことや、医療の再生と復興に向け、必要な手立てをとることを求める声明が採択された。
主催したドクターズ・デモンストレーション2011実行委員会は、今後も大震災の被災者の生命と健康を守ろうと訴え、さまざまな運動を行なうと話している。
(杉山正隆・ジャーナリスト、9月30日号)