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派閥の論理復活で、さらに遠のく政権奪還――自民党は役員人事で内輪もめ
2011年11月1日5:18PM
「政権奪還を目指して頑張らなくてはならない時期なのに、自民党はどうしてしまったのか」
そうした声が聞こえたのは今年八月。参院自民党の役員人事をめぐる混乱が起きた時だ。
発端は昨年八月の会長選挙において、町村、額賀、古賀各派が推す谷川秀善氏と激戦の末、くじ引きで中曽根弘文氏が選出されたことだった。中曽根氏は父・康弘氏の秘書を務めたことのある小坂憲次氏に幹事長を、政審会長には同じ群馬県選出の山本一太氏を任命。「派閥均衡によらない政治」を掲げた。
だが、しこりを残した会長選挙の結果や浜田和幸氏の離党問題など、反対派の不満は膨らんでいた。
幹事長以下の任期は一年で、中曽根会長は小坂氏らの続投を希望したが、党内で賛成を得られなかった。そればかりか旧派閥を率いた年配議員からは「言うことを聞かなければ任期半ばで会長職を交代してもらって構わない」という脅し文句もあったという。さらに内紛を収められない中曽根氏に抗議して林芳正副会長は辞表を提出。これに関する怪文書も飛んだ。
結局人事は一〇月にもつれこみ、溝手顕正氏が幹事長に、岩城光英氏が政審会長に決定。派閥の長老らが望む結果となった。
同時に党役員の人事も行なわれ、政調会長が石破茂氏から茂木敏充氏に、総務会長が小池百合子氏から塩谷立氏に交代している。
茂木氏は額賀派の秘蔵っ子だが、しかし、党内外の人気がなく、文科相を務めた塩谷氏も知名度はイマイチでぱっとしない。このこともあり、今回の人事については参院と同様「派閥の領袖たちが押しつけた長老支配の復活」との見方が強い。だが実際にはそれほど単純ではない様子だ。
「あの人事は谷垣(禎一自民党総裁)さんが決めたもの。来年の総裁選に向けてのものだ」
そう話すのは自民党関係者だ。彼によると、茂木・塩谷の登用は谷垣氏が次期総裁選を有利に闘うための布石だという。
「石破さんは知名度もあり、自民党の一部支持層には人気も高い。小池さんは女性という強みで、自民党が窮地に陥った時に顔として立てることができる。いずれも谷垣氏のライバルになりうる。よって衆院選を見据えた次期総裁選に備え、まずは彼らを潰しておこうということだ」
これは一応成功したかもしれない。たとえば小池氏は九月二九日、都内のホテルで自身の出版記念パーティーを開いたが、いつものような覇気がまったくなかった。
ただし次期総裁選まで、谷垣氏の思惑通りにいくとは限らない。今回の人事で自民党の中堅議員からは強い異論が出ているのだ。
「現政調会長の茂木さんは前政調会長の石破さんと犬猿の仲。茂木さんは石破さんがやってきたことをことごとくひっくり返すつもりだろう」(自民党中堅議員)
その一例が調査会復活だという。
「石破さんが政調会長に就任した時、必要最小限度の調査会を除いて調査会制度を廃止し、部会を中心に据えた。部会なら当選二、三回の若手が部会長を務める。これで長老支配を排し、若手を活躍させようとしたのだが、茂木さんは調査会制度を復活させ、その会長に当選八回以上の大臣経験者を据えるつもりらしい」(同議員)
確かに党役員新人事では小渕優子氏が幹事長代理、小泉進次郎氏が青年局長に登用されている。だが知名度抜群の世襲若手議員はともかく、中堅以下の議員が表舞台に立てる可能性は低くなったと、その中堅議員は話す。
「私は谷垣さんを支持するつもりはない。次期総裁選には安倍(晋三元首相)を応援するつもりだ」
健康問題ゆえに四年前に志半ばで首相辞任を余儀なくされた安倍氏は、今ではすっかり健康を取り戻し、復活に向けて準備を整えているという。一方で政調会長を辞任したばかりの石破氏は、自身の勉強会を立ち上げ、政界再編をも視野に入れた「次」を狙っている。
したたかな思惑が幾重にも重なるがゆえ、混迷が深まる自民党。政権奪還の日が遠のいてしまうのを、彼らは気づいてすらいない。
(天城慶・ジャーナリスト、10月21日号)
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