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株主からも疑惑追及の声――オリンパス、二つの不可解な巨額買収
2011年11月7日7:11PM
自社の企業買収を問題視した前社長兼CEO(経営最高責任者)を、CEO就任(一〇月一日)からわずか二週間で解任したオリンパス(株)(菊川剛会長兼社長、本社・東京都新宿区)が揺れている。東京電力と並び「優良銘柄」だった株価が急落したばかりか、疑惑追及の声が株主の間で広がりを見せ、二五日には複数のメディアが米連邦捜査局(FBI)の動きを報じた。菊川会長兼社長が経営責任をとるだけではすまない状況に発展する可能性も出てきた。
本誌が入手した複数の資料によれば、問題となっている企業買収は二つ。菊川社長が中心となって進めた英国の医療機器会社ジャイラスの買収(二〇〇八年二月)と、(株)アルティスなどいずれも東京都港区内の非公開企業三社の買収(同年四月)に関わる疑惑だ。
ジャイラスについては、(1)買収に関わりフィナンシャル・アドバイザー(FA)=助言会社として契約したAXES社とAXAM社への報酬額が、通常買収額の一%~数%が妥当とされるところ、買収額(日本円にして約二二〇〇億円)の三十数%に及ぶ七〇〇億円近くと莫大であること(報酬額は買収額には含まれていない)(2)FA二社に対するデューデリジェンス(事前の企業・経営調査)が行なわれた証拠がなく実態が不明なこと(3)二〇一〇年三月にすべての支払いが完了した三カ月後、AXAM社は登記していた租税回避地のケイマン諸島で登録を抹消され、以後、動向が不明なこと――などが問題視されている。
アルティスなど非公開企業三社については、(1)いずれも赤字企業にもかかわらず、三社の買収額が計七三四億一九〇〇万円と巨額(2)三社の主業務はプラスティック油化技術(アルティス)、健康食品・化粧品(ヒューマラボ)、電子レンジ調理容器(ニューズ・シェフ)などで、カメラや医療機器のオリンパスとは直接関係なく、これほどの巨費を投じて買収する必要性があるのかどうか疑わしい(3)買収完了年度中に三社買収額の計七〇%ほどを減損処理するなど常識では考えられない経営処理がなされている――などの問題が指摘されている。
オリンパスの株主である米投資運用会社ハリス・アソシエイツとサウスイースタン・アセットマネージメントは二〇日、それぞれ前社長のマイケル・C・ウッドフォード氏(五一歳)が指摘した点について回答を求める書簡をオリンパスに送付。サウスイースタンについては一一月一六日までの回答を求めている。
また、FBIが接触を試みているのは、FA二社に関わる「佐川肇」と名乗る人物とされる。本誌の入手した資料では同氏は野村證券出身で、一九八〇年から米国在住。九七年にAXES社を設立、同社代表取締役でAXAM社の取締役でもあった。
オリンパスでは、「いずれも適正な会計処理がなされている」(広報IR室)として、ウッドフォード氏に対しては「法的措置も検討」との脅しまがいの「見解」を発表(一〇月一九日)。二一日には有識者による「第三者委員会の設立」準備を進めると発表し疑惑の火消しに躍起になっているが、どうやらそれではすみそうにない。
英国に戻ったウッドフォード氏は本誌の質問に答え、オリンパスが法的措置に言及していることに対し「歓迎です。大歓迎。真実に光を当てましょう」と述べ、すでに一連の買収に関わる資料を英国の重大不正監視局(Serious Fraud Office=SFO)に提出済みであることを明らかにした。また、巨額の報酬を得て消えたFA二社(AXES、AXAM)の実態と「佐川肇」氏について同氏は、「まったく知りません。これから、その正体・行方の確認を急ぎます」と答えている。
一方、この買収助言会社について本誌はオリンパスに対して再三にわたり質問しているが、「FA二社については、その社名も守秘義務があり、言えない」(広報IR室)とし、FBIが動き出してもなお、依然としてまともに回答する姿勢を見せていない。
(片岡伸行・編集部、10月28日号)
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