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食品安全委「生涯累積一〇〇ミリシーベルト」答申――「広島・長崎」の被爆データ根拠に
2011年11月16日11:05AM
東京電力・福島第一原発事故による放射能汚染が列島に拡散する中、内閣府食品安全委員会(小泉直子委員長)は食品による内部被曝について「生涯累積でおおよそ一〇〇ミリシーベルト以上の被曝だと健康影響の可能性がある」とする答申を出したが(一〇月二七日)、「生涯一〇〇ミリシーベルト」の根拠にしたのは「広島・長崎」に落とされた原子爆弾の放射能影響についての疫学調査だった。原発事故を「第二の被曝」とみなし、全国民を事実上「被曝者リスク」対象にする限度基準の設定は論議を呼びそうだ。
答申直後に出された「委員長談話」および「放射性物質を含む食品による健康影響に関するQ&A」によると、「生涯一〇〇ミリシーベルト」の判断根拠として「食品分野のリスク分析の考え方に基づき、広島・長崎の被ばくデータを援用」と明記されている。
これについて本誌が「内部被曝についての実証的なデータがない中、根拠が不明ではないか」と質問すると、同安全委リスクコミュニケーション官は「確かに広島・長崎の原爆による放射能被害は外部被曝が中心だが、(被爆者は)当然ながら食品や飲料水などの内部被曝もある。今回はこれらすべてを内部被曝とみなしてデータを援用した」と答えた。
福島第一原発1号機から3号機でのセシウム一三七の放出量は、広島に投下された原爆一六八個分(四七都道府県で単純に割ると一地方自治体当たり三・六個)に相当すると、経済産業省原子力安全・保安院が試算している。しかしこれはセシウム一三七だけの試算で、ストロンチウムなどは除外されている。原発事故による放射性物質の一定期間後の残存量は原爆に比べてはるかに高いとされる。
また、同安全委は今回の答申で、三カ月前の「内部被曝と外部被曝を合わせて生涯一〇〇ミリシーベルト」という説明を修正。「内部被曝だけで一〇〇ミリシーベルト」とし実質的に限度基準をゆるくしたが、これについての合理的な説明はなされていない。さらに福島県を中心に多くの人が相当量の外部被曝にさらされている実態があるにもかかわらず、今回の「生涯一〇〇ミリシーベルト」基準には外部被曝が一切考慮されていないことも問題だ(関連記事45ページ)。
(片岡伸行・編集部、11月4日号)