【タグ】一八歳選挙権|中山太郎|公務員|公明党|共産党|国民投票|大畠章宏|大連立|安倍晋三|山花郁夫|憲法審査会|憲法改正手続法|改憲|政治的行為|枝野幸男|橘幸信|照屋寛徳|社民党|笠井亮|衆議院法制局|赤松正雄|非常事態条項
大震災を理由に非常事態条項導入を主張――改憲派が多数の憲法審査会発動
2011年12月6日9:59AM
憲法審査会の実質的な審議が一七日午前、衆議院で始まった。
委員(五〇名、会長は民主党の大畠章宏氏)は民主三二名、自民一二名、公明二名、共産、社民、みんな、国民新は委員各一名だ。改憲反対の共産、社民は合わせて二名と圧倒的少数で、それに民主党の中の「護憲派」を自任する委員が数名いる程度だ。
憲法審査会は二〇〇七年の安倍晋三内閣当時、国会で強行採決された憲法改正手続法が設置を定めたものだが、その法律制定の経過や附則および一八項目の附帯決議に見られるように重大な欠陥を持った法律であることなどから厳しい批判があり、四年以上始動できないできた。しかし、民主党が参院選で敗北し、衆参両院の議席が与野党ねじれ状況になった後から、始動への動きが再燃。東日本大震災と福島第一原発の大事故の危機に乗じるように、憲法審査会を民自公三党の取引で始動させた。
一七日の審査会では、参考人として元衆議院憲法調査会会長の中山太郎・元外相と、衆議院法制局の橘幸信氏を招いて、「衆院憲法調査会の経緯、並びに憲法改正手続法制定の経緯」などを質疑した。
中山参考人は冒頭、外相時代に起きた湾岸戦争の時、サウジアラビア政府から自衛隊の派遣を依頼されたが断らざるを得なかった「苦い経験」から憲法の在り方を検討すべきだと決意し、憲法調査会設置推進議連を立ち上げたと発言。改憲手続法の制定では、民主党の枝野幸男委員と相談し、改憲発議の予行演習として三分の二以上の支持で決めたいと考えたが、安倍氏が功を焦って「政局問題」にしたことで民主党が反発し、強行採決になった結果、制定後四年の「空白期間」が生じたと、露骨に安倍元首相への不満を口にした。
橘氏は改憲手続法の附則にある一八歳選挙権、公務員の政治的行為の制限、憲法以外の国民投票導入など、「三つの宿題」がそのまま残っていることなどを確認した。
各会派の意見表明では民主党の山花郁夫委員が「(改憲論議は)震災復旧の中、優先順位は相対的に下がる」と発言。自民党の中谷元委員は、3・11大震災と関連して非常事態条項の憲法への導入の必要性を強調した後、自民党改憲推進本部が来年の四・二八(日米安保条約発効六〇周年)をめざして自民党改憲案の改定を準備中で、前文、安保条項、非常事態条項などを検討していると発言。公明党の赤松正雄委員は「憲法三原則」を維持して、新しい人権などを加える加憲論を確認し、憲法調査会以降の七年で国民的関心が盛り上がったのに、空白の四年をつくったことは残念と述べた。
自由討議では自民党の古屋圭司委員が九六条改憲を主張。同党の近藤三津枝委員や柴山昌彦委員もそれぞれ非常事態に対応できる憲法を主張した。この日の最後に一言求められた中山参考人も「非常事態における国の在り方」を議論することが、当面、最大の問題だと強調した。
一方、共産党の笠井亮委員は「憲法審査会を動かす理由は全くない」と指摘し、社民党の照屋寛徳委員は「改憲手続法は国会と国民的議論が不十分なまま強行された。この抜本的な再検討が必要だ。震災の現地や沖縄で反憲法的な生活が強いられている」と改憲策動に反対した。討論で民主党の辻元清美委員は安倍元首相時代の「問題」は単なる「政局」ではなく、九九条の憲法尊重擁護義務と立憲主義を理解していないことから生じた問題だと述べた。
議論の中で自民党の委員が相次いで非常事態への対応に触れたことは、3・11大震災の不幸につけいり、改憲宣伝を企てるもの。また、政局との関連で民主党内に大連立志向が根強くある中で、自民党が来年のサンフランシスコ講和条約発効六〇周年を機に、改憲案の改定を準備していることも見逃せない。米国や財界の改憲要求のターゲットが九条にあることは明らかだが、今後の憲法審査会の審議の中でさまざまな味付けが試みられることに警戒を要する。
参議院憲法審査会も間もなく審議が始まる。憲法審査会の始動で改憲策動は新たな段階に入った。
(高田健・許すな!憲法改悪・市民連絡会、11月25日号)
【タグ】一八歳選挙権|中山太郎|公務員|公明党|共産党|国民投票|大畠章宏|大連立|安倍晋三|山花郁夫|憲法審査会|憲法改正手続法|改憲|政治的行為|枝野幸男|橘幸信|照屋寛徳|社民党|笠井亮|衆議院法制局|赤松正雄|非常事態条項