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「八ッ場ダム中止」はどこへ――瓦解する民主党公約
2011年12月7日6:51PM
民主党は一一月一八日、国土交通部門会議に八ッ場ダム問題分科会(座長・松崎哲久衆議院議員)を設置し、初会合を開いた。国交省関東地方整備局による八ッ場ダム検証が大詰めを迎え、党として国交省に対峙する激論を交えるのかと思われた。しかし座長の姿勢は、国交省がまとめた検証「報告書案」に対する学識経験者への意見聴取と、一般からのパブリックコメントなどについて報告を聞くだけという、悠長なものだった。
一方、検証を急ぐ国交省は意見の論点整理を行なった上で見解をまとめ、再度、民主党分科会と関係六都県幹事会、及び事業評価監視委員会に途中経過を報告する。
その後、この「報告書案」について関係知事や市町村の意見を聴き、事業評価監視委員会で審議した後、最終案として本省の有識者会議にかけられ、大臣が決定するという運びだ。
外堀を埋められた前田武志国交相は、「二四年度の予算に反映させるような時期までに結論を得たい」と衆議院国土交通委員会(一〇月二七日)で答弁をしており、民主党がマニフェストを守るかどうか、決着の時が迫っている。
この間、民主党内では「八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」(会長・川内博史議員、事務局長・初鹿明博議員)が、ダムを中止した場合の生活再建のために「ダム事業廃止地域振興特措法」案を一〇月末の党部門会議で説明を行なった。しかし、法案提出の目処は立っていない。
群馬県長野原町では、後がない状況に、「反対」の声を出しあぐねていた住民が町長に対し公開質問状を出したり、民主党議員に直談判したりする動きも起きている。
もともと「報告書案」は、前原誠司政調会長が国交大臣時代に諮問した有識者会議の考え方に沿っている。治水・利水の必要性を是として、数々の高コストな代替案との比較で「八ッ場ダム優位」と結論した。
前原氏は検証結果が出るや否や不快感を示したが、現在もなんら行動を起こしていない。政調会長自らが乗り出す覚悟がなければ、民主党公約は瓦解する。事業費増額と工期延長も盛り込まれており、不要なダムに延々と税金が注ぎ込まれることになる。
(まさのあつこ・ジャーナリスト、11月25日号)