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【佐高信の風速計】 傍若無人
2011年12月16日6:20PM
日本の社長は自分で自分を選ぶ。九州電力では社長ではなく会長に人事権があるらしいが、ともかく実質的なトップが取締役を選び、その取締役たちによってトップが選ばれるのである。だから、自分で自分を選ぶことになる。
それをチェックする株主総会をはじめ、監査役、労働組合、そして消費者運動等がほとんどこの国では機能していない。原発震災で露呈したように、メディアも批判精神を失っているから、日本の社長は何も恐くないのである。
私は、日本の会社は江戸時代の藩であり、トヨタ藩や東京電力藩と呼んだ方がいいと言ってきた。社長に世襲が多いこともその理由の一つである。だから、大王製紙のように信じられないバカ殿が現れることにもなる。
二〇年ほど前、名古屋から帰る新幹線で、通路をはさんで四人組の紳士と一緒になった。大阪から乗ってきたのか、酒とつまみで大分できあがっている。話の様子では、一部上場企業の会長、社長、それに専務か常務といった顔ぶれらしい。途中に、ガハハハという高笑いをまじえ、会社の人事の話を傍若無人にしゃべる。まさに、傍に人無きがごとしで、聞く気がなくても、声が“侵入”してくるのである。表面的な紳士顔とは違って、その四人には社会性や公共性はまるでなかった。
貸し切りでもないのに何だ、と腹が立ったが、皮肉な目で観察を始めると、これほどオモシロイ漫画もない。
テープレコーダーに録っておいて聞かせてやりたいようなお世辞のやりとり。会長と社長の間に散る微妙な火花。
しばらくして、会長がトイレに立った。すると社長が、
「会長にも困ったもんだ」
という話をし、他の二人が同調する。
次に社長が席をはずすと、待ってましたとばかりに、会長が社長の悪口を言って、二人がうなずいた。
彼らは、隣にいる私はもちろん、自分たち以外の人間のことは考えられないらしい。つまり、「会社」がそのまま新幹線の中でも飛行機の中でも移動しているのである。
私は社長選挙制を提案して猛反発を食らったことがあるが、封建的なこの国の会社を民主化するのは容易なことではない。
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