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【石坂啓の風速計】 まだあわてなくていいか
2011年12月27日12:18PM
ハロウィンではあまり商戦にならないのだろう、一一月になるとすぐ一週めから街のデパートにはクリスマスツリーが飾られる。東京はまだポカポカ陽気。一年の六分の一がクリスマス気分、……というのも何だかなア。
しかし私も月刊誌で仕事をしていた頃は季節感がデタラメだった。一二月号は一一月はじめの発売になる。カラー原稿はその一カ月前がシメキリ。で、いつも九月は残暑の中クーラーをかけながら、サンタさんや雪景色の絵を描いていた。マンガの中でもクリスマスの設定はお話が作りやすいというのが実は本音で、あまりデパートのことを笑えない。
しっかりと商売にものせられている。若い頃は恋愛相手に何をプレゼントしようか毎年浮かれて散財し、シャンパンを飲んだりハデな服を着たりフラフラとイルミネーションに吸い寄せられたり。BGMはワムの『ラストクリスマス』か「きっと君はこな~い~」の山下達郎。
子どもができてからはさらにハズすことのできないイベントと化し、満員のオモチャ売り場に並ばされるわチビッコのパーティーにつきあわされるわ。わが家にやってくるサンタさんは絶対に姿を見せず、息子が心の中で願っているプレゼントをピタリと正確に当て、こっそりと部屋に贈り届けてくれる。息子は大喜びだがこちらのおもてなし準備も大変であった。
考えてみるとクリスマスにウキウキしないというのは、そのまま「トシをとった」に直結している気がする。ちょっと悔しい。でもまあ今さらチキンやケーキをムシャムシャ食いたい訳でもないし、夫とシャンパンを飲みたい訳でもない。街の背景はこの際思いきって若者たちに譲ろう。
さほど浮かれていない、むしろ沈うつな気もちで年の瀬を迎えようという大人たちが今年は多いことだろう。イラク戦争が始まった年も小泉さんが圧勝した年も「おめでとう」の賀状を出す気には全然なれなかったのだが、今年はどうしよう。
「新年、脱原発」……直球すぎるか。「明けまして、閉じよう原発」……同じか。駅ビルのツリーの横ではとっくに年賀状を販売している。郵便局の人たちが街頭に立つのも恒例の光景になった。
まだあわてなくていいか、と思う。今年はゆっくりと一年を考える必要がある。
(11月18日号)