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【本多勝一の風速計】 侵略で“発展”した国は今……
2012年1月5日6:08PM
来年は合州国の大統領選挙があります。他国の大統領だの首相だの以上に注目されるのは、いうまでもなく世界諸国の中でも(今のところ)最も影響力があるからですが、合州国がそうなったのは歴史上では比較的“最近”のことと言えるでしょう。ジョージ=ワシントンが初代大統領に就任した一七八九年から、今年でまだほんの二二二年なのですから。
でも、その「ほんの二二二年間」に、合州国は何をしてきたか。初代大統領ワシントンがまずやったことは、当時まだ大西洋岸ぞいの東部平地が主たる領域だった独立前の合州国から、アパラチア山脈を越えて先住民族諸国(マイアミ・ショーニー・モヒカン・デラウェアなど)を侵略する“討伐”戦争でした。それは一八九〇年の「ウンデッドニーの虐殺」まで約一〇〇年間つづいて、合州国の版図は太平洋岸に達します。
しかし侵略はそのまま東へと続いて八年後のハワイ併合(一八九八年=明治31)、フィリピンの大虐殺(一九〇一年=明治34)、沖縄本島での全住民の三分の一(一五万六〇〇〇人)殺害と、東京大空襲や広島・長崎への原爆による無差別大虐殺(一九四五年=昭和20)。その数年後(一九五〇年=昭和25)から朝鮮半島で行なわれた大戦争で、直接間接に五〇〇万人近い朝鮮人が殺されます。
けれども朝鮮戦争は、合州国にとって初めて「勝てなかった」インディアン戦争でした。その停戦から一〇年とたたぬうちに、ケネディ大統領によるベトナム介入です。これで合州国は、建国以来初めて敗戦を喫するに至り、一九七五年(昭和50)のサイゴン陥落と惨めな米軍脱出・敗走に到ります。(現役の新聞記者だった私にとって、ベトナム解放戦線従軍やサイゴン陥落取材は実に幸せな仕事となりました。)
そして今。オバマ大統領が再選を狙う来年の大統領選まで、あと一年です。今月六日の『朝日新聞』朝刊は「2012米国大統領選 沈みゆく社会」と題して、伊藤宏・望月洋嗣・田中光の三記者による「夢が見えぬ格差の国」を報告しています。
要するにアメリカ合州国の近現代史は、暴力と搾取による侵略で“発展”してきたものの、ベトナム敗戦(侵略失敗)を機に侵略による“発展”ができなくなった結果として、今の「沈みゆく社会」があるのではありませんか。
(11月25日号)
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