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【雨宮処凛の風速計】 災害ボランティアについて
2012年1月5日5:56PM
一〇月一三日、ピースボート主催の「災害ボランティアを活かす仕組みを」というイベントに出演した。
ご存知の通り、ピースボートは震災が起きてすぐボランティアセンターを設立、多くの人をボランティアとして受け入れてきた。その数、六七〇〇人にも上るという。
私自身も四月末、ピースボートの拠点がある宮城県石巻を訪れた。あちこちでひっくり返った車、一面の瓦礫、そして町を覆い尽くす泥、打ち上げられた魚が腐るにおい。どこから手をつけていいのかわからない状況の中、ボランティアたちがあちこちで泥かきをしていた。一面茶色の景色の中に点在するピースボートの青いユニフォーム姿のボランティアたちに、救われるような思いが込み上げてきたのを覚えている。
ピースボートでは、今後、災害ボランティアのリーダートレーニングをしていくという。ノウハウを持ったリーダーを全国各地に育成していくことは、再び災害が起きた時に大きな手助けとなってくれるはずだ。
しかしこの日、ボランティアをしてきた人の話を聞きながら改めて「災害ボランティア」の難しさを思った。被災した人との関係の作り方、コミュニケーション、そして限られた物資の中で支援の優先順位を決めること。災害ボランティアは、極限状態に自らの身を置くことだ。災害の厳しさと同時に、家族を亡くした、家を流されたといった極限状態の被災者と向き合うことから始まる。ボランティアにきたからといって無条件に歓迎されるとは限らない。もし、私だったらなんと声をかけるだろう。そこからもうわからない。
おそらく、災害ボランティアという活動は、それまでの生き方そのものが問われるものなのだと思う。大枠でのマニュアルは作れても、個々人との対応では、その人の価値観・人生観だけが頼りだ。ある意味、何もかもが剥き出しになった場で人とかかわること。それは怖いことのような気がしたけれど、ボランティアから戻ってきた人たちの顔はみんな生き生きしていたのが印象的で、何か大きなものを得たんだな、と思った。
本来、人は助け合って生きることに喜びを感じる動物なのだと思う。今回の震災で多くの人が「ボランティアデビュー」したわけだが、それがこの社会にどんな影響を与えていくか、楽しみにもなったのだった。
(10月21日号)