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元建設省技監と国交相元秘書の暗躍――八ッ場ダム中止公約を蝕む古巣人脈
2012年1月11日7:25PM
一二月八日、二つの意見書が前原誠司民主党政策調査会長に手渡された。「八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」(会長・川内博史衆院議員)らによる八ッ場ダム中止を求める意見書と、党国土交通部門会議(座長・松崎哲久衆院議員)がまとめた部門意見書である。
政策調査会役員会後の会見で前原氏は「部門会議から出された問題について明確な政府回答を求め、それが明確にならない間はダムの本体工事に入ることは容認できない」と述べ、翌九日に藤村修官房長官に申し入れを行なった。
国交省回答、国土交通大臣判断、政権党としての政治判断の行く先は不透明だ。部門意見は国交省に「再検討を行うことを指示する判断もあり得る」と検証の不十分さを強調したが、明快な「中止要求」ではない。
部門会議の玉虫見解の元を探ると、メンバーの一人は建設省の元建設技監で小泉純一郎内閣では国家公安委員長を務めた沓掛哲男衆院議員。多忙を理由に本人は取材に応じず、秘書が「世の中に必要なものはある」と一般論で答え、推進の背景は不明。もう一人は地すべりで工期延長と増額を延々繰り返す未完の大滝ダム(奈良県)の水没地出身者で、前田武志国交大臣の秘書経験がある大西孝典衆院議員。本人が「住民の思いを照らし合わせても、住居移転が終わっている段階で中止は許されない」と心情を語った。これが中止見解を出せない理由である。
二議員の意見を除けば統一見解が出せたのではないかとの筆者の問いに、松崎座長は「個人名を特定するつもりはない」とはぐらかし、公約違反の重大性を理解していない。その松崎座長は埼玉選出議員であるが、埼玉ではちょっとした事件が持ち上がっている。
国交省関東地方整備局が検証中に行なった意見公募に対し、佐久間実埼玉県議が自ら会長を務める「八ッ場ダム建設事業の推進を求める埼玉県議会議員連盟」の大会で、推進意見を書かれた用紙を配り、「会員一人当たり百人分の提出を要請」(一二月六日付『東京新聞』)したヤラセ事件が明るみに出たのである。
古巣人脈に政権公約が蝕まれる中、八ッ場ダム事業の行方は最終局面を迎えている。
(まさのあつこ・ジャーナリスト、12月16日号)