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今後の指導体制は?――金正日総書記が死去
2012年1月16日6:46PM
一二月一九日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日総書記が同月一七日に死亡したと、朝鮮中央通信が報じた。
韓国の国防省海外情報部にて北朝鮮情報分析担当官を務めていた高永チョル拓殖大学国際開発研究所客員研究員は、「金正日総書記があと五年ほど生き延びれば、三男・金正恩を後継者とする準備が整っただろう。北朝鮮にとって予想外に早かったと思われる」と語る。
朝鮮中央通信は訃報とともに「金正日同志の疾病と逝去の原因に関する医学的結論書」というタイトルでも記事を配信。死因は解剖検査によって急性心筋梗塞と心臓ショックだったと書かれた。金正日氏は二〇〇八年の夏にも脳卒中で倒れたという報道がなされており、金正恩氏への権力移譲はこの〇八年の直後から始まったと見られる。
一九九四年七月に金日成主席が死去した際、金正日氏が七〇年代に“後継者”として推戴されていた当時とは状況が異なるのだ。
高氏は「今後二~三年は金正日の妹の夫である張成沢と朝鮮人民軍総参謀長の李英鎬などによる集団指導体制となるでしょう。金正恩が前面に立たされますが、実質的に国を動かすのは彼らになるでしょう」と語る。
張成沢氏は国防委員会副委員長で事実上ナンバー2の立場におり、金正日氏の右腕として動いてきた。李英鎬氏は一〇年に、金正恩氏とともに党中央軍事委員会副委員長に就任。軍事部門の教育係だとされる。
しかし、このような人物がバックに付いたとしても、金正恩氏へスムーズに権力移譲が進むかどうかは未知数だ。
「党の権力者と軍部が権力闘争を繰り広げる可能性もあります。また、金正恩の“カリスマ性作り”が整っていない状況のなか、民衆による反政府行動に火がついて政権転覆が図られる可能性も排除できません」(高氏)
今後、北朝鮮は追悼期間に入り、六カ国協議への参加など、主な外交活動は自粛されることが予想される。喪が明けるまで、北朝鮮の新しい指導体制に対して、日本政府は東アジアの平和と安定のためにどのような取り組みを準備できるのか。その手腕が問われる。
(金香清・編集者、12月23日号)