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NTTドコモと元暴力団幹部の過去と現在――元暴力団員、無罪釈放の不可解
2012年2月13日11:55AM
NTTドコモを恐喝したとして逮捕されていた元暴力団幹部で経営コンサルタントの鴻池宗一氏が、昨年末に無罪釈放されていたことが分かった。容疑は、ドコモに過去の不祥事を公表するとほのめかし、金品を要求したとする恐喝未遂(昨年一二月二三日号本欄参照)。だが恐喝の事実などなく、反対に鴻池氏とドコモとの密接な関係が明らかになった。
鴻池氏はなぜ逮捕されたのか。あるドコモ関係者は、今のドコモ総務部が鴻池氏との過去の経緯を知らずに警察に相談し、警察も「元暴力団幹部」という肩書きに過剰に反応したとみており、ドコモ内部に「総務の対応をいぶかる人間もいる」という。
鴻池氏も、これまで「ドコモの総務部長が交代すると向こうから挨拶をしてきた」と話していたが、昨年着任した加川亘総務部長(取締役)からは「挨拶はなかった」と振り返る。
ではなぜ、かつてのドコモ総務部は鴻池氏を厚遇してきたのか。それは両者の過去に“不適切な関係”があったからではないか。
たとえばドコモは、二〇〇二年まで大星公二会長が実権を握っていたが、水面下では熾烈な権力闘争が繰り広げられていたという。その最中に鴻池氏は、「関係者の紹介で大星会長と食事をした。別に私からの用事はなかったが、その後、大星会長は身内から元暴力団幹部と交際していると攻撃されて、結局相談役に退いた。もちろん私と会ったことだけが退任の原因ではない。けれど結果的に私の存在が権力闘争に利用されたのは間違いない」と打ち明ける。
また、一九九九年に当時のドコモ副社長だった田島斉氏が自殺した。鴻池氏は「田島さんとは時々食事をしていた。最後は自殺の一カ月ほど前で、その時、自分に何か頼みたい様子だった。結局、本人から具体的な話を聞くことはなかったが、後で関係者に聞くと、田島さんは何か不祥事の責任を押し付けられて窮地に追い込まれていたという。それで自分に何かをさせたかったようだ」と語る。
つまりドコモ関係者は、鴻池氏の元暴力団幹部という肩書きや裏社会を熟知しているからこそのスキルを利用しながら、一方では過去の肩書きに目をつむり、普通の仕事を鴻池氏の関与する企業にさせていたことになる。
鴻池氏はドコモ幹部らと交流する際、一緒にした飲食の支払いをしていただけでなく、鴻池氏の顔が利く赤坂のクラブや六本木の有名料亭などを幹部らが独自に利用した支払いまで負担していた時期もあり、その総額は「一〇〇〇万の単位になった」とも語る。
そんな“貢献”の見返りで、鴻池氏が顧問をしていた産業廃棄物処理業者のA社が、ドコモ本社の過去二回の引越しの際に廃棄物の処理を請け負ったことがあり、「引越しの話は、当時のドコモの総務部長と自分が直接打ち合わせをした」(鴻池氏)というのだ。
結局、鴻池氏とドコモには互いを利用してきた過去の積み重ねがあり、「お世話になった人もいるから言えない話もある」という。
鴻池氏は昨年ドコモに出向いた際、自分がNTTグループから受けた不適切な営業に関する話もしたという。
今回の騒動は、過去を知らない総務部長が鴻池氏を単純に元暴力団幹部と考えて対応し、警察に駆け込んだことで想定外の展開になってしまったとみられる。
鴻池氏の釈放後、ドコモの広報に見解など問うても対応はなぜか総務部に回され、総務の担当者は「捜査にかかわることはこちらでお話しできない」「個別の取引きのお話はできない」などと逃げ口上を繰り返すだけだった。
これまで鴻池氏の関係する企業に、ドコモなどから発注された仕事の総額は「一〇〇億円を超える」(鴻池氏)という。
ドコモは、元暴力団幹部とここまで親密になった経緯を、いったいどのように考えているのか? コンプライアンスを重視する企業であるならば、この際きっちり説明すべきだろう。
(杉原章一・ジャーナリスト、2月3日号)