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法務局登記業務、民間委託で混乱――受託した派遣会社に是正指導
2012年3月8日6:22PM
各地の法務局から登記簿等の公開業務(乙号事務)を受託している派遣会社、ATGカンパニー株式会社とアイエーカンパニー合資会社(社長はともに大屋武志氏、以下ATGとアイエー)が、受託先の多くで、法務局から是正指導されていることがわかった。
是正が求められたのは、両社が受託し乙号事務を行なっていた一三現場で、所沢支所、久喜、秩父の各支局、鴻巣、飯能、志木、川越、坂戸、春日部、上尾、草加、川口、本庄の各出張所。文書の指摘事項は黒く塗り潰されている。
登記制度は国民の財産や取引の安全を確保するインフラで、乙号事務は、以前は法務省職員のほか民事法務協会が一手に引き受け、熟練労働者が担ってきた。
ところが小泉純一郎政権下、「官から民へ」のターゲットにされ、競争入札に移行。なかでも、低価格で札を入れ次々に仕事をさらったのがATGとアイエーだ。
両社の実態を調べるため、筆者は法務省等に情報開示請求し、大量の関連資料を得た。それによれば、ATGとアイエーは二〇一〇年、さいたま地方法務局の監査で、多数の是正指導を受けている。
同法務局では「人員配置など契約の履行や、業務の遂行を確認しています」と説明しており、両社に、法令や契約にふれる不適切な行為が多数あったとみられる。民事法務労働組合などの調査でも利用者から両社への苦情が目立ったが、公文書でも裏付けられた形だ。
ところが、両社が提出した「事業報告書(月報)」を見ると、「法務局からの改善指示事項」には「なし」の文字が並ぶ。法務局の監督が日常的には機能せず、業者丸投げになっていた疑いも浮かんだ。
両社は昨年四月、登記簿の不正取得で業務停止処分を受けた。今年一月三一日には健康保険・厚生年金保険料の基礎となる従業員報酬を二七〇人分ごまかしていた罪(虚偽の届出)で略式起訴された。
両社は「経理などの(重要)業務は岡山で行ない」(大屋社長)、登記簿にはウソの住所を載せていた。まともな会社とは考えにくい。
法務省は「業務の質を確保するよう来年度からの入札見直しを検討中だ」(民事局)とする。熟練労働者から職を奪い、札付き業者を跋扈させた「労働ダンピング競争」を変えられるか、注目される。
(北健一・ジャーナリスト、2月24日号)
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