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「里親家庭の虐待を考える」シンポ――現状は「国の育児放棄」

2012年3月9日6:38PM

 三歳の里子女児を虐待死させたとして元声優の里親女性が昨夏に傷害致死容疑で逮捕された杉並事件を受け、シンポジウム「里親家庭の虐待を考える」が二月一九日、東京・中野区のこども教育宝仙大学で開かれ、約二三〇人が集った。主催は杉並事件を考える会(代表・前田信一同大学専任講師)。

 シンポではまず、本誌二月一〇日号で同事件の検証記事を執筆したフリージャーナリストの小宮純一さんが取材報告。「いろんなSOSサインが出ていたのに児童相談所に届かず、児童相談所もまた確認を怠った」とし、支援体制の不備を指摘。杉山登志郎・浜松医科大学特任教授は乳児院や児童養護施設への長期入所が愛着障害や発達障害を引き起こす現状を示し、「日本の社会的養護は破綻しており、国を挙げてのネグレクト(育児放棄)だ」と痛烈に批判した。また津崎哲雄・京都府立大学教授は、国が進める里親委託の推進については「施設を経ずに早期に里親に委託するという方向性はよい」と評価しながらも、「日本の社会的養護には理念がない。里親と連携を密にすべきソーシャルワーカーも社会的に認知されていない」などと問題点を指摘した。

 後半は里親を二六年間続けてきた坂本洋子さん(東京・八王子市)らを加え「虐待死を防ぐために」をテーマに討論。虐待が、社会的養護の貧弱さや機能しない児童相談所など構造的な問題から引き起こされる実態を浮き彫りにした。

(片岡伸行・編集部、2月24日号)

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