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復興が進まないのは住民エゴか?――「がれき処理=支援」に疑問
2012年4月3日12:20PM
環境省を中心として進められている被災地がれきの広域処理。現在のところ東京都、岩手県盛岡市に続いて静岡県島田市の桜井勝郎市長が三月一五日、正式な受け入れを発表したが、広域処理が進まない理由を「NIMBY=Not In My BackYard」つまり受け入れを拒む住民の“身勝手さ”と片付ける風潮に、異論が上がっている。
「ストップ放射能汚染がれき首都圏ネットワーク」は一四日、都庁で会見し、事務局の高瀬幸子さんは「広域処理は真の被災地支援になっているのか」と疑問を投げかけた。「さよなら原発・みなと」事務局長の佐藤れい子さんも「利権構造が原発立地の時と同じ。住民も分断されつつある」と、原発立地の際に受け入れ自治体の住民が分断された歴史になぞらえた。
『朝日新聞』は三月六日付で環境省の見開き二ページ全面広告を打った。また、『読売新聞』は三月一一付、東北震災からちょうど一年の拡大版「編集手帳」で、がれき受け入れを拒否する住民を指して「羞恥心を覚えることなく『絆』を語るには、相当に丈夫な神経が要る」と揶揄している。
大手マスコミが行政と足並みをそろえて呼びかける広域処理だが、被災がれきのうち、広域処理される割合は全体の二割弱。このことについて東京・大田区議の奈須りえ議員は、「復興が進まないのは広域処理が進まないからだとし、住民のNIMBYが原因とするのは行政の責任転嫁ではないか」と異議を呈し、また、「がれき受け入れには科学的正当性が欠けている」と指摘する。
奈須議員の要請により岩手県が作成した資料によると、災害廃棄物四三五万トンのうち、約三九%に当たる一七一万トンはコンクリートや土砂で、復興資材として埋戻し用に使用されるという。海岸沿いは地震によって地盤が下がっているため、土地を造成する必要があるからだ。また、土砂のうち八〇万トンは太平洋セメント(株)が有償で引き取り、再利用されるのだという。
東京都に搬入される宮城県女川町の災害廃棄物(混合ごみ)は、現地で廃プラスチック、布・紙類、コンクリート、木材等に手選別されている。手間とコストをかけ分別されているにもかかわらず、東京二十三区清掃一部事務組合の清掃工場では、受け入れ基準に従い木材八割に廃プラと布・紙類二割をブレンドし焼却している。奈須議員は「資源として活用できる可能性がある」と話す。
(野中大樹・編集部、3月23日号)