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“派遣法違反”労働局是正指導に――『日経』大阪本社で派遣切り
2012年4月6日5:10PM
労働者派遣法に違反する形で校正スタッフを受け入れていた日本経済新聞社(喜多恒雄社長、以下日経)が、労働局の是正指導に対し、派遣を切ることで対応していたことがわかった。厚生労働省職業安定局によると、同種の指導をされた企業の九七・六%が雇用を維持(うち二一%は直接雇用)しており、雇用を終了させる形で違法状態を解消したのはきわめて異例だ。
問題の舞台は日経大阪本社。日経は校正スタッフを、「期間制限のない専門二六業務」の扱いで派遣会社から受け入れてきたが、二〇一一年一〇月一七日、大阪労働局が立入検査。校正業務が二六業務にあたらないと判断し、同年一一月一日「雇用の安定を図りつつ是正措置を取る」よう指導した。それに対し日経大阪本社は、派遣スタッフの就労を打ち切った。
派遣元は、日経スタッフ(太田一彦社長)という日経子会社だが、是正指導後、日経は同社をテンプスタッフに売却し、日経スタッフはテンプスタッフ・メディア(齋藤隆行社長)に看板を変えた。ただしその本社は、ひき続き東京・千代田区内神田の日経新聞社別館内にある。
契約を切られた派遣スタッフの女性は新聞労連関西新聞合同ユニオンに加入。テンプスタッフは団体交渉に応じているが、日経は二月以降話し合いを拒んでいる。
大阪本社で三年働いてきて契約を切られた女性は、「校正の仕事はずっとあるのに仕事に慣れたら切られるというのはおかしいし、慣れないと職場もたいへんです。何とかならないかテンプスタッフの役員が日経に掛け合ったが無理だった、と聞きました」と話す。
取材に対し日経は、「労働局と見解の相違があり、派遣法違反とは考えていない。派遣会社が派遣中止を決めたため、その後は(校正に)社員を充てている。派遣スタッフにはほぼ雇用の場を確保した。日経スタッフ売却は本件とは関係ない」(広報)とした。
派遣問題に詳しい龍谷大学の脇田滋教授は「派遣会社は『名ばかり雇用主』なので、実質の雇用主である派遣先が問題を解決すべきだ。専門業務外で一年を超えて働かせていれば、直接雇用申込み義務もある。そもそも校正のような基幹業務のスタッフは、社員として雇用すべきだ」と話している。
(北健一・ジャーナリスト、3月30日号)