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「石原新党」は石原氏三男、宏高氏のためか――結党に至らない老政治家たちの群像
2012年5月7日11:38AM
党の代表と政調会長が同時に離党し、しかもその発表の場が離党する政党の会議室。四月六日夕方に開かれた亀井静香氏と亀井亜紀子氏の離党会見はまさに異例ずくめだった。
「この混乱をこのまま引きずるわけにはいかない。この混乱を起こしている責任をとって離党するという決断をした」
消費税増税をめぐって下地幹郎幹事長ら六人の議員と対立し、前日に代表を解任された亀井氏はやや憔悴した様子で、いつもの軽妙な「亀井節」は聞かれなかった。それでも「代表として辞める」と、最後の意地を見せた。
この日が来ることを、亀井氏は予感していたのかもしれない。あれは二〇一〇年六月に郵政民営化改革法案が見送られた時だった。当時金融担当相だった亀井氏は、連立離脱を決意。しかし連立維持にこだわる下地氏らの反対に押され、自らが閣外に去ることでおさめてしまった。
だが今回は事情が違う。実際に郵政民営化法改正案は四月一二日に衆院を通過した。月内での成立は確実の模様だ。
そもそも国民新党は、〇五年の郵政選挙で小泉改革に反対して自民党を離れた議員らで結成したという経緯がある。亀井氏らにとって、すでに党はその使命を果たしたといえる。次に狙うのは新党結成だ。亀井氏の構想では、橋下徹大阪市長と石原慎太郎東京都知事がタッグを組み、亀井氏がそれに乗ることになっている。頼みとするのはかねてからの盟友である石原氏。しかしそれには障害が多い。
まずは石原氏の態度である。四月四日に石原氏は橋下氏と大阪で昼食をともにした。出版社の対談企画のために京都に行った石原氏が橋下氏を誘ったものだったが、新党についての話は進まなかった様子だ。翌々日の知事定例会見で石原氏は「(新党の話は)全然していない」とぶっきらぼうに述べている。
石原氏が思わせぶりな態度をとるのは、今に始まったことではない。二〇〇〇年の衆院選前にも「石原新党」の噂が出たことがある。中心として動いたのは亀井氏と自由連合代表だった徳田虎雄氏だ。彼らは平河町の高級中華料理店などで何度も会合を重ねたが、結局は石原氏が決断できずに話は流れている。
この時はまだ石原氏にとって「次」があったが、今年八〇歳を迎える現在では事情が違う。各世論調査でも、石原新党への期待はさほど大きくはないという結果が出ている。それでも石原氏が動かざるを得ない理由は、落選中の三男・宏高氏の存在だ。石原知事に近い議員はこう述べる。
「そもそも宏高氏は政治家に向いていない。対戦相手の民主党の松原仁氏は国家公安委員長兼拉致問題担当相に就任したから、なおさら勝てる見込みはなくなった」
「しかし母親の典子夫人がどうしても宏高氏を国政に復帰させたい。そのためには新党を結成して、宏高氏を比例に押し込むしかない。だから知事に新党結成をけしかけているらしい」
石原氏は一六日に米国で東京都による尖閣諸島買収案をぶち上げたが、新党の話題作りだろう。四男・延啓氏の絵画を都が購入した件と重なるところがある。
さらに事情を知る関係者はこう述べる。
「新党に乗りたいのは亀井氏だけではない。平沼赳夫氏も石原氏を巻き込んで、新党結成を目論んでいる」
亀井氏も平沼氏も、もともとは同じ志帥会のメンバー。二人は郵政民営化に反対して〇五年に自民党を離れたことも共通している。実際、今年の一月に石原氏も含めた三人が仲良く会食したとの報道もあった。ならば昔の仲間を全員巻き込んでの新党結成が実現するのかと思えば……。
「そうはいかない。実は平沼氏と亀井氏との関係があまりよくない。しかも平沼氏は表に出たがる。一緒になろうとしても、うまくいくはずがない」(関係者)
老政治家たちの同床異夢を国民は理解するのだろうか。
(天城慶・ジャーナリスト、4月20日号)