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マスコミが煽り立てた「ミサイル」大騒動の裏側――ミサイルの次は尖閣諸島か
2012年5月7日11:46AM
日本中が混乱に陥った「北のミサイル」騒ぎは、四月一二日の朝鮮民主主義人民共和国側の「実験失敗」であっけなく収束した。だが、日本もその対応に「失敗」したのも明らかだ。
元航空幕僚長の田母神俊雄氏は『夕刊フジ』(四月一〇日号)で、「大騒ぎをする必要など全くないのである。(中略)どうせ何事も起きないことは、あと一週間もすれば明らかになるであろう。(中略)いまイージス艦を動かしたり、パトリオット(PAC3)を起動展開させたりしているが、これらは軍事的な必要性に迫られているのではなく、極めて政治的な動きなのである」と指摘している。軍事的観点だけから見れば、当然のことを主張しているにすぎない。
そもそも、「ミサイル」の予定軌道から二〇〇〇キロも離れた都心に自衛隊のパトリオット(地対空誘導弾)を配備することに意味はあったのか。政府・マスコミが大騒ぎした「政治的」理由は、日米一体のミサイル防衛態勢を構築する口実にし、有事態勢を恒常化させるためだろう。
空自航空総隊司令部は三月二六日、東京都府中市から在日米軍横田基地に移転を完了。米第五空軍司令部と一体でミサイル防衛にあたる「共同統合運用調整所」の運用を開始した。同「調整所」の新設は二〇〇六年の米軍再編「最終報告」で明記されており、今回が初のミサイル防衛対処となった。
だが、マスコミが「ミサイル」だと煽り立てた「光明星三号」は先端部分に火薬物が装填されていないロケットにすぎず、日本領土内で被害があったとしても、PAC3やイージス艦搭載のSM3では対処不能な「破片」によるもの。だがこれ幸いに「大騒ぎ」し、「共同統合運用調整所」を軸とする実践演習に利用した可能性が高い。
結果的に「ミサイル発射」と政府がそれを確認した時間差が四四分という「失敗」に終わる。新設された「共同統合運用調整所」は、何も機能しなかったのか。これについて、柳沢協二元内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)は「米軍の早期警戒衛星の早期警戒情報(SEW)が最初に発射情報をキャッチし、『共同統合運用調整所』を経由してただちに官邸に転送されているはず」と指摘する。
「しかし、SEWは熱源の種類や経路の特定ができず、イージス艦からの情報を待っていた。ところが北側が失敗したため、イージス艦の空域に『ミサイル』がこなかった。そこで、別のエンジンテスト等の可能性を考えてしまい、実際の発射ではなかった場合に発射情報を出したら誤報になる。田中直紀防衛大臣の責任問題になるのを恐れ、確認するまで時間がかかったのだろう」(同)
この二月から三月にかけて在日米軍は韓国軍と共に二度も連続して「北侵攻」を想定した大規模軍事演習を実施している。圧倒的な軍事力で脅しをかけ、相手が対抗措置を取ったら「挑発」と「大騒ぎ」するような構造こそ問題だろう。
一方で沖縄では、八日に「宮古島を軍事の島にしないで!市民集会」という平和アピール行進が、一一日には「政府防衛省・自衛隊によるPAC3の配備に反対し外交の平和的解決を求める県民集会」が、市民団体などによって実施され「沖縄を戦場にするな!」「PAC3・自衛隊は撤退せよ!」といったアピールが採択された。
沖縄県議会の比嘉京子議員(沖縄社会大衆党)は「八重山で問題となった『育鵬社』教科書問題や、旧日本軍司令部壕の説明板『慰安婦』削除問題、そして今回のミサイル騒動はすべてつながっている。軍隊への警戒心が強い沖縄を切り崩そうとする防衛省の意図が透けて見える」と分析した。
石原慎太郎・東京都知事は四月一六日、米国ワシントンでの講演で、東京都が尖閣諸島の購入を進めていることを明らかにした。都議会の同意を得ることも審議にかけることも「これから」だという。
国境の島を紛争と人気取りの種にするのは石原氏の常套手段だが、都民の税金を使って自らの政治信条を推し進めるのは「我欲」以外の何物でもないだろう。
(本誌取材班、4月20日号)
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