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福島原発告訴団の思い(2) 浅田眞理子さん
2012年5月17日5:25PM
「失われた田舎暮らし」 みどりの未来・ふくしま 浅田眞理子さん(63歳)
17年前、東京から福島県都路村(現在は田村市都路町)に移住した。阿武隈山系にある雑木林の中に家を建て、夢に描いてきた「田舎暮らし」が始まった。
秋の夕暮れ時、薪ストーブに火をいれる。「森のテレビジョン」と言われるその炎は美しく見飽きることがなく、夫と二人並んで時が経つのも忘れて眺めた。そんな穏やかで平和な時はもう戻らない。薪が放射能で汚れてしまった今、焚くことはできなくなった。
川口由一さんの提唱する「耕さず、肥料さえも施さない」自然農のたんぼや畑は、私の天国だった。毎日新しい発見があり、そこにいるだけで楽しかった。すべての生き物がいとおしい存在だった。ともに生きているという喜びがあった。そこに種をまき、育った米、雑穀、豆、野菜たちは、それ以上にいとおしかった。わが子のように自慢できた。小さくても、少々形が悪くても、味は抜群だった。兄弟姉妹や友人たちに自信をもって贈ることができた。訪れてくれた友人たちへのもてなしは、山里でとれた幸で十分だった。でも、その喜びはもう戻ってこない。
それなのに、「年20ミリシーベルト以下の放射線量だから家に戻れ」という。山の中にいながら、山の恵みもいただけず、米や野菜もつくれず、薪ストーブも焚けない……。戻ってどんな生活をすればいいのだろうか。
避難した石川県金沢市での都会生活の中で、思いまどう日々が続いている。
(まとめ・明石昇二郎〈ルポライター〉、4月27日号)