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再稼働をさせないあらゆる方策を――全原発停止から次のステップへ
2012年5月24日6:32PM
全原発が止まった。
残念ながら市民運動が稼働中の原発を止めたわけではない。が、再稼働を止めたことが原発全停止をもたらしたのだから歴史的な快挙であることに変わりはない。国も産業界も再稼働は「時間の問題」と思っている。そうさせないために次のステップをめざしたい。
単純に日本中の設備を積み上げれば、電力が足りないことはあり得ない。しかし今年の夏、国や電力会社や大企業は、電力不足キャンペーンを張り、計画停電あるいは「不測の事態」を演出して停電を引き起こす可能性がある。
経済産業省は、原発なしで夏を乗り切れば「やっぱり原発は要らないじゃないか」という世論が台頭するとして何としても再稼働したかったのだから、次の手として停電を演出する恐れがある。枝野幸男経済産業相も「一瞬ゼロになる」という発言で、恒久的に止めるつもりはないことを表現している。だからこそ、停電キャンペーンを跳ね返し、原発がなくても大丈夫な社会を作る必要がある。
かりに足りないとしても日中の数時間にすぎない。従って停電を回避するために必要なのはピークカットである。これは大企業のピークシフト型就業時間の採用、電力削減分のペイバック制度の導入、オフィスの省エネ化推進のための新たな割引制度などの取り組み、電源融通の拡大と電力自由市場の拡大で解決する課題だ。自家発電を持つ会社からは、関西などの既存電力会社以外に供給し、そこから買い取る方法もある。時間停電を引き起こさないあらゆる方策を官民挙げてすべきだ。
現在、ストレステストの二次評価が終わった原発は一つもない。一次評価の結果のみで再稼働をするとしているが、安全の観点からは「論外」だ。四閣僚+仙谷由人・民主党政策調査会長代行の「政治判断」が安全を担保するわけがない。一次評価は耐震設計審査指針改訂に伴う「追加の評価」つまりバックチェックの焼き直しだ。福島第一原発も同じ評価をしていたら「合格」したような評価にすぎない。
唯一異なるのは「津波の高さ」を「従来の津波評価に九・五メートル加えて」評価したところだ。これは「福島第一原発で波高五・五メートルに対して実際には一五メートルの津波に襲われたことから、九・五メートルかさ上げして評価する」ことにしたためだ。「既往最大」つまり原発で記録された津波の最大の高さで評価した。
ならば地震動の大きさも同じ考え方で「既往最大」とすべきだ。これまで最大の揺れに襲われた原発は柏崎刈羽原発で二〇〇七年に発生した中越沖地震の「解放基盤表面で一六九九ガル」である。
津波と同様の基準で考えるならば、大飯や伊方などすべての原発に一六九九ガルの揺れを入力し、それでも制御棒は規定時間内に挿入できるか、配管の損傷はないか、圧力容器の支持ボルトは破断しないか、建屋の構造は大丈夫かなどの評価を実施する必要がある。
もはや「想定外」などと言えない現状だから、この程度の評価をすることに異論などないだろう。
柏崎刈羽原発と異なり、大飯原発の建つ地面は鉄分が豊富な硬くて脆い岩盤だ。強力な揺れが直接原発に到達し、破壊することは避けられない。内陸の活断層が動く地殻内直下地震の衝撃力はすさまじく、歴史的に数多くの山体崩壊を引き起こしてきた。
これらを総合的に考慮すれば、「安全」と言えるような原発はどこにもないのである。
原発の運転再開を止め続けたのは、経産省前のテントをはじめとした市民のたゆまぬ努力だ。憲法一三条などに反した存在である原発を、このまま止め続けるために、あらゆる取り組みを進めよう。
(山崎久隆・たんぽぽ舎、5月11日号)
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