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読売新聞の「理屈にならない理屈」――「清武班」潰しの不可解
2012年5月30日6:31PM
巨人の球団代表を解任された清武英利氏が、『読売新聞』社会部時代にキャップとしてまとめた著書の復刊をめぐり、読売新聞社は四月一一日付で、出版社「七つ森書館」への出版契約無効確認請求訴訟を東京地裁に提起した。
本書は、金融不祥事の闇を浮き彫りにした連載記事で、一九九八年には『会長はなぜ自殺したか――金融腐敗=呪縛の検証』(新潮社)として刊行された。
「七つ森書館」は昨年九月から刊行している『ノンフィクション・シリーズ“人間”』(監修・解説は評論家で本誌編集委員の佐高信氏)に本書を入れるべく、二〇一〇年一二月から読売新聞社と交渉を始めていた。交渉は順調に進み、著者名を「読売社会部清武班」とすることにも合意。一一年五月九日に出版契約を結んだ。
しかし同年一一月、清武氏が代表取締役会長である渡邉恒雄氏を告発したことで同社は態度を一変。「七つ森書館」によると、昨年一二月、読売新聞社の法務部部長と同主任が来社し、「出版契約の解除をしたい。補償はお金でする」と申し入れた。が、「七つ森書館」は同社の申し入れを拒否。出版の意思に変わりはないことを伝えた。読売新聞社は、合意に至らなかったため提訴に踏み切ったとしている。
同社は出版契約無効を訴える根拠の一つとして「出版契約の交渉をしていたのは、権限のない社会部次長だった」(東京本社広報部)としている。しかし「一会社の『内規』を社会一般の常識に当てはめることはいかがなものか」(「七つ森書館」)という疑問の方が正当だろう。
そもそも、最大手マスコミである読売新聞社で「権限のない人間が契約交渉をする」ということがありうるのか。清武氏は「ありえない。知財部や法務部などと協議しながら進めていたはず」と話す。
清武氏は、読売新聞社の行為について「理屈にならない理屈をつけ、出版させまいとするのはきわめて残念。私のことが憎いにしても、出版とは無縁の話」と批判。また、「おかしいという人が『読売新聞』の中からも出てこなくてはいけない。それが新聞記者、とりわけ社会部の精神」だと話している。
出版流通対策協議会(高須次郎会長)も五月一四日、読売新聞社に対し「訴訟を取り下げ、七つ森書館に対して謝罪、補償をすべき」という抗議声明を出している。
(本誌取材班、5月18日号)