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米国は「戦闘準備はできている」と大使――対イラン攻撃を求める決議が可決
2012年6月5日3:52PM
米国の対イラン政策が、キナ臭さを増している。下院本会議は五月一八日、四〇一対一一の大差で、「イランが核兵器能力を獲得」した場合に事実上軍事攻撃を求める決議583を可決した。これに対して反対票を投じたクシニッチ議員(民主党)は、「核兵器能力」という曖昧な用語は民生用も含んで拡大解釈が可能だとして、「対イラン戦争へ一歩踏み出すものだ」と強く批判。また、パウエル元国務長官の補佐官を務めたウィルカーソン氏も「この決議はイラク戦争前の記憶を呼び覚まし、武力行使の先駆けとなる」と指摘している。
一方、米国のシャピロ駐イスラエル大使も一七日、イスラエル法曹協会でのスピーチで「(イランに対しては)軍事攻撃より外交的手段が望ましい」と述べながらも、「軍事的選択が有効でないということではない。その準備はできている」と断言。暗に戦争態勢が完了していることを示唆した。
事実、ペルシャ湾の対岸にあるバーレーンを拠点とした米第五艦隊のフォックス司令官は二月の段階で「いかなる不測の事態にも対応できる準備を完了した」と言明。第五艦隊は現在、イランとの開戦を想定して二つの空母機動部隊を展開しているほか、イランが警告しているホルムズ海峡の機雷封鎖に備え、すでに掃海艇も現地に派遣されている。
中東と中央アジアを担当する米軍の統合部隊・中央軍も五月一日付の米『ワシントン・ポスト』紙(電子版)によれば、「開戦から約三週間でイラン全軍を空・海からの攻撃で壊滅できる」と表明している。中央軍の発表によれば、イラン周辺に一二万五〇〇〇人の部隊をすでに配置。うちアラブ首長国連邦には、米空軍の最新鋭ステレス戦闘機F22も先月末から配備されている。
オバマ大統領はこれまでのところ、「軍事攻撃の選択は排除しない」としながら、イラン石油の禁輸措置など国際的な経済制裁を中心にイラン側に圧力を加えて「核武装の放棄」を迫る方針。だが米国のシンクタンクが一八日に発表した世論調査では、米国民の実に六三%が「イランの核兵器入手を阻止する」ためなら軍事行動に賛成すると表明しており、再選を目指す大統領に戦争を回避させる国民的圧力はきわめて弱い。
(成澤宗男・編集部、5月25日号)