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信州大学を勝訴させた裁判官は大学講師だった――裁判官派遣めぐり国賠訴訟
2012年6月12日5:54PM
信州大学の医学部教授解雇事件(本誌二月一七日号既報)をめぐり、前代未聞の国賠訴訟が提起された。関連三つの訴訟を担当し、すべて被告(信州大学側)に勝利判決を出した長野地裁松本支部の田代雅彦裁判官(四七歳)が信州大学の非常勤講師を務めていることが判明したため「憲法で保障された公正な裁判を受ける権利を侵害された」として、原告の小山省三・元医学部教授(六五歳)が国を相手取り損害賠償を求めた。裁判官の派遣をめぐる最高裁人事のあり方を問う異例の裁判となる。
原告らは提訴した五月二五日に東京地裁内の司法記者クラブで会見。「裁判官の派遣については派遣に伴う支障や事情を考慮しなければならず、最高裁の行為は裁判官派遣法四条に違反している」と指摘した。訴状などによると、炭素素材カーボンナノチューブの安全性研究を担当していた小山氏は二〇一〇年七月に懲戒解雇されたが、その解雇無効を求める地位保全仮処分申請など三件の訴訟を途中から担当したのが一一年四月一日付で長野地裁松本支部長に着任した田代裁判官。同裁判官は赴任から約三カ月後の六月二九日に仮処分を却下、今年一月一一日には他二件の請求も棄却し、いずれも信州大学側勝訴の判決を出した。
ところがその後、田代裁判官が松本支部に赴任した当日から信州大学法科大学院の非常勤講師となり、仮処分を却下した六月には大学との間で「教授等の業務を行なう」正式な契約書を締結していたことが、原告側の調査でわかった。
原告代理人の山根二郎弁護士は「最高裁は信州大学の裁判の担当になることを知って田代裁判官を大学に派遣したはず。知らなかったでは通らない。しかも大学での裁判官の上司が、小山氏を解雇処分にした当事者だ。田代裁判官は裁判を降りるか、講師を降りるかを選択すべきだった。徹底的に闘う」と述べた。
(片岡伸行・編集部、6月1日号)
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