福島原発告訴団の思い(6) 古川眞智子さん
2012年6月15日2:43PM
〈告訴は悲劇を繰り返さぬための「けじめ」〉 福島県いわき市在住 古川眞智子さん(60歳)
私たち夫婦は14年前、いわき市の山奥に家を建て、山を開墾し、無農薬有機農法で畑を作り、果樹を植え、沢から水を引いてワサビを栽培し、伐採した木にキノコを植菌し、薪ストーブで暖を取るという生活を謳歌していた。
家で飼っている2匹の犬たちも、自由に野山を駆け回り、畑を荒らす猪を追い払ってくれた。私たちへの手土産とばかりに、モグラやネズミを狩ってくることもあった。私たちは、そんな平穏で幸せな日々を過ごしていた。
だが、原発事故ひとつで、そのすべてが台無しにされた。家の東側は竹林で、北と西側は杉林。除染のしようがない。犬たちにまで、凄まじいばかりの被曝をさせてしまっている。私がライフワークにしていた自然観察の案内人「もりの案内人」の活動も、ひどい放射能汚染のためにできなくなった。
事故から半年間は、毎日涙がこぼれて仕方なかった。体調も芳しくなく、今も口内炎を繰り返している。あの日以来、心の休まる日は一日たりともない。大きな地震が来て、福島第一原発の4号機が崩壊する夢を何度も見た。
でも、これだけの被害を引き起こしていながら、なぜ誰も刑事責任を問われていないのだろう。このまま原発事故が風化してしまえば、この国は第二、第三のフクシマの悲劇を繰り返すに違いない。私たちの刑事告訴は、決してそうはさせないための「けじめ」である。
(まとめ・明石昇二郎〈ルポライター〉、6月1日号)