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戦争被害の差別を問う――大阪空襲の控訴審始まる
2012年7月5日10:02AM
太平洋戦争末期、一万五〇〇〇人もの犠牲者を出した大阪大空襲の被害者や遺族らが国に謝罪と損害賠償を求めた「大阪空襲訴訟」の控訴審が六月一一日、大阪高裁で始まった。
国は、旧軍人・軍属とその遺族にはこれまでに五〇兆円を超える恩給や年金を支給している。援護の対象は引揚者や沖縄戦被害者へと広がり、原爆被爆者や中国残留邦人に対する援護立法も制定したが、民間の空襲被害者については「戦争という国の存亡にかかわる非常事態のもとでは、国民は等しく耐えねばならない」という「戦争損害受忍論」を押しつけ、何の補償もしていない。
大阪空襲訴訟の原告たちは「戦争損害受忍論を空襲被害者だけに押しつけるのは、法の下の平等をうたった憲法一四条に違反している」などと主張、二〇〇八年一二月八日に大阪地裁に訴えた。空襲をめぐる集団提訴は東京に次いで二例目。
原告は、爆弾の破片で足を失った人、焼夷弾で全身大火傷を負った人、肉親を亡くして戦災孤児になった人など二三人。年齢は六七歳から八二歳。〇九年三月の初弁論以来、原告らは証言台に立ち、自らの空襲体験やその後の苦難などを訴えた。だが一審判決(昨年一二月七日)では、国が主張した「戦争損害受忍論」は支持しなかったものの、「補償を受けた者と原告との差異は不合理とは言えない」として請求を棄却した。
この日の第一回口頭弁論では、六歳のときに空襲で左足の膝から下を奪われた安野輝子さん(七三歳)が意見陳述を行ない、「人権の砦である司法に、日本の良心を問うてみたが、一審判決は微塵も感じられなかった。このままでは空襲はなかったことにされてしまう」と涙ながらに訴えた。
次回の公判は、九月二四日午後三時半から二〇二号法廷で。
(矢野宏・大阪空襲訴訟を支える会代表、6月22日号)