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責任回避に終始した東電「最終報告書」のオソマツ――被災者救済より組織防衛か
2012年7月12日6:29PM
東京電力が六月二〇日に発表した「福島原子力事故調査委員会」(社内事故調)の最終報告書。添付資料を含めると八〇〇ページを超えるが、内容は新聞紙上などで酷評されているとおり自己弁護と責任回避に終始し、とても事故調査報告書とは言い難いものだった。
四時間に及んだ会見では、社内事故調委員長の山崎雅男副社長をはじめとする東電の出席者らが、都合の悪い質問になると論点をずらし長演説のような回答を繰り返した。昨年の事故直後の会見で、炉心溶融の可能性を指摘されると被害が軽くなるデータだけを根拠に燃料被覆管の損傷であると主張し続け、状況をミスリードしたことに通じるものがある。報告書では「得られたデータから判断できる範囲で正確に炉心の状況を伝えることに努めていた」のであって「炉心溶融を否定し続けてきたという事実はなかった」と結論づけ、情報を「隠そうとした事実や意図はなかった」としている。しかし実際は、事故直後からの炉心の水位情報を持っていたにもかかわらず、公表はメディアに指摘された昨年四月になってからだった。水位情報があれば、炉心溶融の可能性を軽々しく否定できなかったはずだ。
報告書ではまた、事故原因の背景をほとんど説明していない。たとえば原因は想定外の大津波だと断定しているが、なぜ想定できなかったのかは分析していない。同様に、新しい耐震指針に基づく安全性評価が大幅に遅れたことを反省点としているが、なぜ遅れたのかは検証していない。このため事故を引き起こした原因の本質や、責任の所在が見えない。これでは組織防衛を図っているように見られても仕方ない。
報告書が東電の意思だとすると、被害者への賠償を最小限に抑える方針につながりかねず、現実にそうなっているケースも。東電という組織を根本から変えない限り、被害者救済は進まないだろう。
(木野龍逸・ジャーナリスト、6月29日号)