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大飯原発建設の三菱グループ企業が現地調査も――活断層の“八百長”調査再び
2012年8月17日6:05PM
再稼働が強行されながら、敷地内の破砕帯が活断層である可能性が指摘されている関西電力大飯原発の原子炉を製造した三菱重工のグループ企業が、同機の設置許可申請当時にトレンチ掘削調査を担当していた事実が明らかになった。さらに、関西電力が近く実施する敷地内の断層追加調査でも再びこの企業が請け負う予定で、国会議員や市民団体などから「身内企業の調査では信頼性に疑念が生じる」との批判が出ている。
この企業は、都内に本社がある(株)ダイヤコンサルタント。「地盤や道路・河川の調査設計」を業務とし、主な株主は三菱マテリアルや三菱東京UFJ銀行などで、三菱グループのサイトでも加盟社として登録されている。ところが原子力安全・保安院がこのほど公開した大飯原発3・4号機の「調査工事別実施事業者一覧表」によると、ダイヤコンサルタントは一九八二年と八三年に「敷地調査」を計三度実施。八三年には、「海底地質調査」も実施している。
調査後、関電は一九八五年に同3・4号機増設の「設置変更許可申請」を提出し、3号機は九一年一二月、4号機は九三年二月にそれぞれ運転を開始。両機はいったん停止した後、今年七月に全国の原発に先駆け再稼働したが、その前から敷地内の「F-6」と呼ばれる破砕帯が活断層ではないかとの指摘が専門家から出されていた。
関電はこの指摘を受けた形で七月一三日、3・4号機増設時におけるダイヤコンサルタントによる「破砕帯の密度や強度を測定する別の調査」の写真公開に踏み切った。だが、写真の多くはトレンチの壁面がブルーシートで覆われており、活断層の可能性を指摘している渡辺満久東洋大学教授は「これでは何もわからない」と語る。関電側は「破砕帯のトレンチ内の壁面状況を確認する調査の写真は確認でき」なかったとしながら、「増設時の審査において現地調査を実施している」として、破砕帯は活断層ではないと強調している。
問題は、なぜ大飯原発の原子炉を製造した三菱重工と同じ企業グループの会社が、あえて設置許可に必要な「現地調査」を担当したのかという点。本誌に対し、ダイヤコンサルタントの広報は「『技術者倫理』に基づいて調査した。三菱重工は当社と資本関係のない別会社だ」と述べている。
だが、前述の「調査工事別実施事業者一覧表」によれば、「ボーリング」と「弾性波探査」「岩盤試験」「試掘抗調査」「岩石試験」などをすべて実施した関電興業(株)(現在は関電プラント)は、関電の一〇〇%子会社。つまり原発設置事業者と、原発の根幹部分である原子炉製造メーカーの関連会社が、設置許可申請に不可欠な事前調査の大半を独占している構図だ。
しかも原子力安全・保安院は七月一八日、世論に押されて関電に対し、「F-6」が活断層かどうかを判断する「念のための」調査を指示したが、ダイヤコンサルタントが調査実施社に指名された。同社による最初の調査が問題にされて大飯原発の安全性が疑われながら、なぜ再調査をやらせるのか。
このため、社民党の福島みずほ参議院議員や自民党の河野太郎衆議院議員ら九の政党・会派の衆参両院議員一四人が七月三〇日、野田佳彦首相と枝野幸男経済産業大臣に対し、「大飯原発の破砕帯(断層)再調査に関して、第三者による早急な調査を求める緊急要望書」を提出。そこでは「身内企業や原発を建設する会社の関連企業が調査を行っていたことは、調査の公平性・信憑性に重大な問題があります。それにもかかわらず、今回もまた同一の会社に調査を実施させるなど許されることではありません」と強く批判している。また調査に当たり、大飯原発の稼働をまず中止するよう求めている。
これに対し、原子力安全・保安院は「どの会社であっても、間違いなく調査をやることが重要で、同じ三菱グループでも、三菱マテリアルの系列と聞いている」などとして、議員側の「要望書」を突っぱねる構え。相も変わらぬ原子力ムラの官・業もたれ合いが続いているようだ。
(成澤宗男・編集部、8月3日号)
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