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海水浴場で「痴漢」職質中に転落死――愛知県警証言に疑問
2012年8月27日5:53PM
「頭を上にしてバランスよく落ちた。手を伸ばしたが届かなかった」(趣旨)と警察官は証言した。だが別の男性は「前に倒れるようにバランスを崩して落ちた。手が触れたようにみえた」(同)と異なる証言をする。真相は――。
二〇〇八年八月三日、高木勇吾さん(当時二五歳)は妻子・友人とともにバーベキューをするために愛知県の千鳥ヶ浜海水浴場を訪れていた。友人と浜を散歩していたところ、見知らぬ男女グループから「痴漢した」と言いがかりをつけられる。一人の男が殴りかかり、もみ合っているところへ半田署員が登場。高木さんは近くの建物に連行され、二階に閉じ込められる。半田署の臨時詰所だった。
そこで高木さんは「職質」を受ける。人違いであることは、彼が泳げなかったことからも明らかだが、ふいに高木さんは開いていた窓から外に飛び出す。窓の外には幅一・三五mのベランダがあり、さらに外側に鉄製階段があった。高木さんはベランダ越しに二mほど落下、階段に設置された防犯柵に首を貫かれて死亡した。
遺族は裁判を起こし、訴えた。
〈勇吾の痴漢容疑は人違いだ。警察は勇吾を突き飛ばすなど乱暴な態度で接した。それを不快に感じて窓から飛び出した際、警官二名が手を出して体をつかんだ。結果、バランスを崩して落下、死亡した。愛知県には責任がある〉
この訴えを、今年三月、名古屋地裁は切り捨てた。警察の主張を鵜呑みにした遺族敗訴判決。警官の手は触っていないというのだ。
納得しない遺族は今年七月、ボールを落とす再現実験をして検証した。結果、疑問はさらに濃厚となる。「頭を上にしてバランスよく落ちた」ならば、高木さんの首が鉄柵に刺さるはずがない。警官の手は確実に高木さんの足をつかんだ。高木さんはバランスを崩し、階段にぶつかった。そう考えるのが合理的ではないか。遺体の損傷状況とも合致する――。
控訴審弁論は一〇月二日午後二時半、名古屋高裁一〇〇三号法廷。
(三宅勝久・ジャーナリスト、8月10日号)