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イラン近くのアラビア海で挑発的な軍事演習――9月に海自が米軍訓練参加
2012年9月6日6:01PM
海上自衛隊は九月一六日から二七日にかけ、アラビア海で実施予定の米海軍が主催する過去最大規模の「国際機雷掃海訓練」に掃海艦など艦艇二隻を派遣する。これには日・米以外にも一八カ国の海軍が参加するとされるが、米海軍はホルムズ海峡をイランが機雷などで封鎖した場合に備え空母四隻を中心とする大軍をアラビア海付近に集結させつつある。間違えれば演習が戦闘に移行するような緊張が極度に高まっている地域に、あえて海自を派遣する野田佳彦内閣の判断が問われそうだ。
今回の派遣に当たり政府内では、「ホルムズ海峡封鎖をちらつかせているイランを挑発することは望ましくないとして、慎重論もあった」(『産経』七月二三日付)というが、「訓練」は挑発そのものだ。
米国防総省のリトル報道官は、「訓練はイランに対するメッセージを送るのではない」とし、場所も「中東の航路」(海自は「アラビア半島周辺海域」と発表)としか述べていない。だが米海軍はペルシャ湾を望むバーレーンの第五海軍基地などホルムズ海峡周辺に、八月中に四隻の空母艦隊を配置予定。機雷処理にあたる掃海艇も計八隻派遣されているほか、新型の機雷破壊用超小型無人潜水艦をはじめ、海兵隊やヘリコプター部隊の洋上基地となる輸送揚陸艦など、即戦部隊が大集結している。また周辺国への波及を念頭に、カタールにはミサイル防衛(MD)システムを配備した。
イラン側にすればこれだけの大部隊が目の前に展開しているのに加え、近辺で明らかにホルムズ海峡での戦闘を想定した大演習が実施されれば、開戦が迫っていると受け止めかねない。無用に軍事的緊張を煽るだけだ。
前述の『産経』によれば、政府は「『航行の自由』の確保を重視する姿勢を内外に示す必要」から参加に踏み切ったという。だがイランが自国経済の破滅を覚悟で世界的石油ルートのホルムズ海峡封鎖を示唆しているのは、米国がイスラエルの核武装に目をつぶり、CIAなど国内諜報機関の分析に反して「イランの核武装」を非難し、軍事的威嚇や経済制裁を続けていることへの対抗措置のためだ。日本政府はもし戦争になったら、「『航行の自由』の確保」のために海自を参戦させるのか。
(成澤宗男・編集部、8月24日号)